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『ブリット』カーチェイスの新たな地平を築いた、’60年代を代表する刑事ドラマ

Bullitt ©1968, Package Design & Supplementary Material Compilation ©2008 Warner Bros.Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All Rights Reserved.

『ブリット』カーチェイスの新たな地平を築いた、’60年代を代表する刑事ドラマ

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『ブリット』あらすじ

ジョー・ロスというマフィア組員が裁判の重要証言者として当局に保護された。サンフランシスコ市警察本部捜査課のブリットが護衛を担当するが、目を離した隙にロスが部屋のドアを開けて、組のヒットマンによって射殺されてしまい、もう一人の護衛も重傷を負ってしまう。ロスがヒットマンとタイミングを見計らったようドアを開けたことを知ったブリットは、事件の裏に何か陰謀が隠されていることを感じ取る。そこでブリットはロスがまだ生きていることにして、殺し屋を誘き寄せる作戦にでるのだった。


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当初は乗り気ではなかったスティーブ・マックイーンの代表作



 筆者はクルマに全く興味がない。一応免許は持っているけれど、完全なペーパードライバーである。フェラーリやランボルギーニ、ポルシェを見てもテンションは全然上がらない。何の感情も沸き起こらない。そう、完全なるクルマ不感症なのである。


 そんな筆者でも、スティーブ・マックイーン主演の映画『ブリット』(68)のカーチェイスには心底シビれた。フォード・マスタングとダッジ・チャージャーの、およそ10分に及ぶ激しいバトル。サンフランシスコの地形を巧みに利用した撮影と編集に、「これぞ映画だ!」と感激したものだ。当時の観客も、未知なる映像体験に度肝を抜かれたことだろう。この作品のカーチェイスは映画史の伝説となり、後続のカーアクション演出を決定的に変えてしまう。


 一体、『ブリット』のカーチェイスは何が新しかったのか?その説明は後述するとして、作品の成り立ちを簡単に説明しておこう。原作は、ミステリー作家ロバート・L・フィッシュの『Mute Witness(無言の目撃者)』。実は、元のシナリオにカーチェイスは存在していなかった。最初の草稿では、フランク・ブリット警部補は事件を一度も解決したことがない、敏腕刑事とはかけ離れたキャラ設定。車での追いかけっこなんぞ、もってのほかだったのである。


『ブリット』予告


 スペンサー・トレイシーを主演に想定されていたシナリオは、彼の死によって企画自体が暗礁に乗り上げてしまい、巡り巡ってスティーブ・マックイーンとプロデューサーのフィリップ・ダントーニの元へ。この時点で、ダントーニは地味すぎるシナリオに派手な追跡劇を加え、舞台もボストンからサンフランシスコに変更した。当時のサンフランシスコ市長が映画ロケの誘致に熱心で、何かと撮影の便宜をはかっていたからだ。カーチェイスのために複数の道路を封鎖したり、夜のサンフランシスコ国際空港を占拠したり。今では考えられないほど、シネマ・ファーストな撮影が可能だったのである。


 ところが肝心のスティーブ・マックイーンが、この企画に乗り気じゃない。若い頃から血気盛んだった彼は警察とのトラブルが多く、刑事を演じることに抵抗があったのだ。「プロフェッショナルとして、なんなんだその理由!」と個人的には思いますが、当時の妻ニール・アダムスの説得もあって、どうにかこうにか重い腰を上げることに。


 結果は大成功だった。マックイーンが立ち上げたソーラー・プロダクションの第一回製作作品となった本作は、全米年間興行収入ランキング5位の大ヒットを記録。当初は及び腰だったにも関わらず、彼の代表作となってしまったのである。





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