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『追いつめられて』ケネス・フィアリングの小説「大時計」をめぐる3つの映画

(c)Photofest / Getty Images

『追いつめられて』ケネス・フィアリングの小説「大時計」をめぐる3つの映画

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『追いつめられて』あらすじ

海軍士官のファレルはパーティーで出会った魅惑的な女性スーザンと恋に落ちる。しかし、スーザンは国防長官デヴィッドの愛人だった。やがてファレルの存在に気づいたデヴィッドは嫉妬してスーザンを殺害、その捜査担当はファレルが任されることに。ところが、発見された証拠は全てファレルが犯人であることを指し示している。ファレルは事件の犯人に仕立て上げられていたのだ・・・。


Index


出世作『アンタッチャブル』と同時期に公開



 ポール・アンカの「夕暮れの街」は、CD音源をなかなか探し出せない幻の楽曲のひとつだった。この楽曲の原題は「NO WAY OUT」。「NO WAY OUT」=「逃げ場がない」というタイトルは、ケヴィン・コスナー主演の映画『追いつめられて』(87)の原題でもある。「夕暮れの街」は、『追いつめられて』の劇中に使用されていた楽曲なのだ。ところが、この音源が収録されたLPやCDを入手することは、前述の通り長らく叶わなかった。それは、映画の公開当時に発売された『追いつめられて』のサウンドトラック盤はもちろん、数多あるポール・アンカのアルバムにも収録されていなかったからである。


 ケヴィン・コスナー主演の『追いつめられて』は、彼の出世作である『アンタッチャブル』(87)の約二ヶ月後にアメリカで公開され、約1,500万ドルの製作費に対して、国内だけで約3,500万ドルを稼ぎ出した。『追いつめられて』は1986年の4月にクランクイン、また『アンタッチャブル』は1986年の8月にクランクインしているので、実は製作順では『追いつめられて』の方が先に撮影されていたということがわかる。ジーン・ハックマンやショーン・ヤングが共演者として名を連ねているとはいえ、当時のケヴィンは、まだ一部の映画ファンにしか知られていない存在だった。そういう意味で、『アンタッチャブル』の後に公開するという作戦は功を奏したのである。


『追いつめられて』予告


 当時カナダにいた筆者は、地元のシネコンで『アンタッチャブル』と『追いつめられて』の二本を同時期に鑑賞している。テレビのエンタメ情報番組ではケヴィンの魅力が度々紹介されていただけでなく、劇場のロビーには『アンタッチャブル』と『追いつめられて』の巨大な宣伝物が並べられ、何となく“ケヴィン推し”の雰囲気があったことを思い出す。その光景は、彼が一躍“客を呼べる”ハリウッドのスターとなった瞬間でもあったのだ。この頃、ケヴィンの出演料は50万ドルから80万ドルへと跳ね上がっていた。


 場面がカットされるという不運が続き「編集室の床に寝転がる男」と揶揄された、ケヴィン・コスナー不遇の時代については、『アンタッチャブル』の記事と重複するため割愛するが、彼の存在が周囲の証言(素晴らしい俳優であるという世評)によって徐々に認知されていったことと、『追いつめられて』で主人公の存在が徐々に証明されてゆくという過程が、奇しくも合致するという面白さもある。無論、『追いつめられて』の主人公の場合は、その存在が知られてはならない立場にあるのだが。





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