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『クルエラ』がパンク映画になり得た、監督・脚本・主演・スタジオの“共謀関係”

© 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『クルエラ』がパンク映画になり得た、監督・脚本・主演・スタジオの“共謀関係”

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『アイ,トーニャ』監督×『女王陛下のお気に入り』脚本家



 ディズニーは10年以上をかけて、自社コンテンツの実写化プロジェクトを進めてきた。『アリス・イン・ワンダーランド』(10)や『マレフィセント』(14)『ジャングル・ブック』(16)『美女と野獣』(17)『アラジン』(19)『ムーラン』(20)などだ。また、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズや『ジャングル・クルーズ』(2021年7月30日公開予定)など、ディズニーランドのアトラクションの劇映画化も継続して行っている(とん挫したものの、「海底2万マイル」をデヴィッド・フィンチャー監督で映画化する企画も動いていた)。


 今回の『クルエラ』もそうした企画の一環であり、以降は『リトル・マーメイド』から『リロ&スティッチ』の実写化まで、多数が待機中。ディズニーヴィランズの映画化という点では、本作は『マレフィセント』の系譜に連なる作品ともいえよう。


 これらのディズニー実写化作品には、いくつか特徴的な共通項が挙げられる。ひとつは、名の通った監督の起用だ。『アリス・イン・ワンダーランド』や『ダンボ』(19)はティム・バートン、『シンデレラ』(15)はケネス・ブラナー、『アラジン』はガイ・リッチー、『ジャングル・ブック』と『ライオン・キング』(19)はジョン・ファヴロー、『プーと大人になった僕』(18)は『007 慰めの報酬』(08)や『ワールド・ウォーZ』(13)のマーク・フォースター。『美女と野獣』は『シカゴ』(02)の脚本を務めたビル・コンドンが務めた。


『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』予告


 『クルエラ』においては、『ラースと、その彼女』(07)や『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17)のクレイグ・ガレスピーが起用された。同じディズニーのMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)はインディペンデント系の作品で台頭してきた気鋭の監督を抜てきする傾向が強いが、それとは明確な住み分けがなされているように見受けられる。


 ディズニー実写化では、監督だけでなく、各スタッフに著名クリエイターを起用。たとえば『アラジン』では『グレイテスト・ショーマン』(17)『ラ・ラ・ランド』(16)に参加した作詞・作曲家コンビ、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールを招へい(アニメ版の作曲家アラン・メンケンも新曲を書き下ろした)。『美女と野獣』では『ウォールフラワー』(12)の原作・監督、『ワンダー 君は太陽』(17)の監督スティーブン・チョボスキーが脚本に参加。


 なお、『クルエラ』は『女王陛下のお気に入り』(18)のトニー・マクナマラやNetflix『ロマンティックじゃない?』(19)のデイナ・フォックスが脚本に参加しており、この並びを見た時点で、作品の全体的なカラーについてイメージが浮かぶのではないか。



『クルエラ』© 2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.


 エマ・ストーンは『女王陛下のお気に入り』のほかにも『ラ・ラ・ランド』や『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)など、地面に這いつくばり、辛酸をなめながらももがく“汚れ役”の要素を含んだキャラクターをパワフルに演じてきた。そこにマクナマラやフォックスが加わり、マーゴット・ロビー扮する実在のスケート選手の壮絶な半生をエネルギッシュに描いた『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』のガレスピー監督がメガホンをとれば、主演・脚本・監督と“強み”が揃っているクリエイターの三重奏(トリオ)が立ち現れる。すなわち、「わきまえない」女性が逆境や格差に挑んでいく痛快作だ。


 本作はクルエラ/エステラが生まれた瞬間のシーンから始まり、「やだ、ここから始める?」という人を食ったようなモノローグが入る。さらに、エステラが学校に通い始めるシーンでは「まだ1964年。女の時代はもう少し先」というモノローグも。これらのテイストや演出は、まさに『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』であり『女王陛下のお気に入り』でもある。当然ながらエマ・ストーンの演技との相性も抜群。優しくない現実に対し、エキセントリックな方法で食って掛かる本作のカラーは、主演・脚本・監督がこれまで作り上げてきた作品の系譜に、完璧に合致しているのだ。




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