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『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』を生み出した、セルジュ・ゲンズブールの倒錯的な嫉妬

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『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』を生み出した、セルジュ・ゲンズブールの倒錯的な嫉妬

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国籍の無効化



 「場所はアメリカでもフランスでも、イタリアでもどこでもよい。モノクロの世界での超現実的で非喜劇的な関係。普通ではない二人の人物が束の間の異常な愛に生きる」(セルジュ・ゲンズブールによるシナリオ解説*)


 黄色のトラックが田舎の風景を走り抜ける。トラックの前面にはアメリカン・ヴィンテージなブロンド女性のプレート。乗っているのはクラスキーとパトヴァン。ゲイのカップル。ふいに視界に飛び込んできたカラスがフロントガラスを血塗れにする。「不吉だ」と片方の男がつぶやく。車から降りた男は、カラスの死骸を思いっきり空に投げる。ダダダダダダダダッ!!!。銃声の口真似。打ち上げられたカラスの死骸を乱射する男…。


 『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』の公開時、フランソワ・トリュフォーは、ラジオのリスナーに向けて熱烈なメッセージを発信する。「わたしの映画は見なくてもいい。セルジュの映画を見に行ってくれ!」。


『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』予告


 『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』は、フランス映画のどこにも属さない。ジャン・リュック=ゴダールによる『男性・女性』(66)、イエジー・スコリモフスキによる『出発』(67)等、歴史的傑作のカメラマンを務めてきたウィリー・クラントが、本作のカメラを務めているが、その作風には、ヌーヴェル・ヴァーグからの影響が周到に避けられている。むしろその作風は、セルジュ・ゲンズブールとブリジット・バルドーが演じた「ボニー&クライド」のショートフィルムが引き寄せるアメリカン・ニューシネマのルックに近い。しかし、アメリカン・ニューシネマのざらつきはゲンズブール流にソフィスケートされ、画面はエレガントな色彩を纏っている。


 また、アンディ・ウォーホルのアンダーグラウンド・フィルムで知られるジョー・ダレッサンドロを主演に抜擢していることから、NYアンダーグラウンドとの接点を連想させるが、主演のジェーン・バーキンによると、セルジュ・ゲンズブールはアンディ・ウォーホルの映画の存在すら知らなかったのだという。


 セルジュ・ゲンズブールの名曲「ジョニー・ジェーンのバラード」の美しい旋律が繰り返される中、何処から来たのか何処へ行くのかさえ不明なポーランド人とイタリア人のゲイのカップルが、ジェーン・バーキン演じるヒロインと出会う。都会のゴミを運ぶトラック。ここは都会のゴミ捨て場。ヒロイン曰く、「退屈すぎて最高」な田舎の生活。ジェーン・バーキンの働くアメリカン・スタイルなダイナーの裏側は娼館になっていて、ロックバンドがストリップの劇伴を務める。『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』は、その舞台と設定により、予め国籍の属性を無効化させている。




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