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『モータルコンバット』IMAX®で強化される〈リアル〉と〈荒唐無稽〉の幸福な融合
全編、怒涛のアクション三昧
映画『モータルコンバット』の楽しみのひとつは、主人公・コールのほか、ゲームでおなじみのキャラクターを体現する個性豊かなキャスティングにある。世界中から招集された出演者たちは、人種や民族といったアイデンティティの意味でも、またこれまでの活動という意味でも、きわめて多様な顔ぶれだ。
なかでも劇中で大きな存在感を放つのは、戦闘シーンを牽引する“武闘派俳優陣”である。コール役を演じるのは、『デッドプール2』(18)やNetflixドラマ「五行の刺客」(19~)のルイス・タン。スタント界の大御所フィリップ・タンの息子で、幼少期から武術の訓練を積んだ、まさに正真正銘のアクション俳優だ。「アクション映画ならば俳優自身がアクションを演じなければ」と豪語するルイスは、その言葉通り、激しさとスピードを兼ね備えた格闘シーンを自ら演じている。
「アクションによって物語を進めたかった」とマッコイド監督が語るだけあって、『モータルコンバット』は全編アクション三昧だ。ソニア・ブレードやカノウ、ジャックス、クン・ラオ、シャン・ツンといったゲームのキャラクターが、それぞれの能力を操ってノンストップのバトルを繰り広げていく(たとえば、浅野忠信演じるライデンの能力は雷だ)。登場人物の能力が豊富ゆえ、アクションシーンのバリエーションも豊富。本物の肉弾戦、CG表現が活きるファンタジックな戦闘、一瞬が勝敗を分かつ命のやり取り……。残酷表現が冴え渡る格闘の決定打、“フェイタリティ(トドメの一撃)”は「モータルコンバット」シリーズ最大の特徴とあって、大スクリーンでも完全再現される。ただ残酷なだけでなく、要所で作品を引き締める効果をもつ点もポイントだ。
『モータルコンバット』© 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
ルイスのほか、出演者には『パワーレンジャー』(17)『アクアマン』(18)のルディ・リン(リュウ・カン役)、元スタントパーソンというキャリアを持つマックス・ファン(クン・ラオ役)、そして『ザ・レイド』(11)のジョー・タスリム(サブ・ゼロ役)というマーシャルアーティストが結集。日本からは、アクション俳優としての経歴も豊富な真田広之がスコーピオン/ハサシ・ハンゾウ役で参戦した。通常上映でも武器と肉体を駆使した高速バトルに息を呑むが、IMAX®版ならば、あたかも戦場に立ち会うかのような没入感と緊張感をもって体感できることだろう。
特筆すべきは、スコーピオン/ハサシ・ハンゾウ役として久々の本格アクションを演じる真田広之の存在だ。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)ではわずかな出番にとどまったが、本作では渋味の利いた格好良さを日本の観客にも改めて教えてくれる。物語の骨格というべき設定を一人で担う説得力、まったく切れ味の衰えない殺陣、登場するや観客の視線をさらう存在感には、「今、ハリウッドの大作映画でここまで格好良い真田広之を観られるとは……」という感慨すら覚えるはず。1970~80年代の真田の作品を知るファンにこそ、その活躍を劇場で見届けてほしい。