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『テス』に刻印された、ロマン・ポランスキーのオブセッションとは

©1979 PATHE PRODUCTION - TIMOTHY BURRILL PRODUCTIONS LIMITED

『テス』に刻印された、ロマン・ポランスキーのオブセッションとは

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※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


Index


ポランスキーが映画化に取り憑かれた、「ダーバヴィル家のテス」



 "to Sharon(シャロンのために)" 


 映画『テス』(79)の冒頭には、女優シャロン・テートへの献辞が捧げられている。タイトル・ロールのテス役は、もともとシャロンが演じるはずだった。トマス・ハーディの原作「ダーバヴィル家のテス」は彼女の愛読書で、いつか夫の映画監督ロマン・ポランスキーが素晴らしい映画にするだろう、という予感を抱いていたという。


 だが、その夢は無残に打ち砕かれる。高級住宅地ベル・エアの豪邸で、当時妊娠8ヶ月だった彼女はマンソン・ファミリーの手によって殺害されてしまったからだ。ハリウッドを震撼させた「シャロン・テート殺害事件」については、最近でもクエンティン・タランティーノが『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)で取り上げているし、すでに多くの文献や資料がたくさんあるので、その詳細については省略させていただきます。興味ある人はいろいろググってください。


 当時、夫のロマン・ポランスキーは、新作の仕上げのためにヨーロッパへ飛んでいたため無事だった。美しい若妻とお腹にいる子供を惨殺され、彼の内面には強烈な闇が広がったことだろう。しかもポーランド人の彼は、幼少期をゲットーで過ごした経験があり、母親はアウシュビッツに収容されドイツ人に虐殺されているのだ。ポランスキー本人の証言によれば、その時母親は妊娠していたという。


『テス』予告


 子供を身ごもった肉親を二度までも殺されるという、強烈すぎるトラウマ。そして『テス』もまた、美しい若妻が赤ん坊を失い、彼女自身も処刑される物語。ポランスキーが取り憑かれたようにこの小説の映画化にこだわったのは、己自身に巣食うオブセッションによるものだろう。


 シャロンの死から数年後、ポランスキーは一人の美少女に出会う。彼女の名前は、ナスターシャ・キンスキー。ナスターシャ・キンスキーに魅了されたポランスキーは、彼女主演で念願の企画『テス』の映画化に着手する。





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