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『キャット・ピープル』ポール・シュレイダーが熱望した海外アーティストとのコラボレーション

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『キャット・ピープル』ポール・シュレイダーが熱望した海外アーティストとのコラボレーション

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現代アメリカ映画界の鬼才



 東京都現代美術館で開催された展覧会、「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」(2020年11月14日〜2021年2月14日)。エンターテイメントの最高峰とも言えるアカデミー賞やグラミー賞を受賞するという偉業を達成しつつも、日本ではその活躍を未だ一部の人にしか知られていない、偉大なアートディレクター/デザイナーの大回顧展だ。権利関係が複雑なため、大規模で実施されるのはおそらく最初で最後だろうと言われている。


 圧巻の作品群を生み出し続けたキャリアの中でいくつかの大きな転換点があったのだが、その中でも重要なのが、会場でも大きくブースを設けている、三島由紀夫の生涯を描いた『Mishima – A Life in Four Chapters』(85)の、プロダクションデザイン(美術)への参加であろう。自身初の映画参加、しかもハリウッド映画という超弩級のチャレンジだったにも関わらず、カンヌ国際映画祭芸術貢献賞受賞というとんでもない結果をもたらした。このプロジェクトによって彼女は一躍世界で知られ、以降、世界中のアーティストとコラボレーションの長い旅を始めていく。



 全くの映画素人であった彼女を大抜擢したのはプロデューサーのトム・ラディと、監督のポール・シュレイダーだ。特に監督はプロダクションデザインを最重要視し、自分や撮影監督ジョン・ベイリーと同じくらい大きな権限を彼女にもたせた。映画経験の一切ない美術監督に従うことになった東宝スタジオスタッフとのトラブルもあり、撮影は常に緊張状態であったようだ。しかしポール・シュレイダーは石岡瑛子の最大の理解者であり、いかなる時も盾となって守っていたという。


 マーティン・スコセッシ監督作『タクシードライバー』(76)、『レイジング・ブル』(80)の脚本家として名を轟かせたポール・シュレイダーだが、自身の監督作ではチャレンジングなスタッフィングで取り組む方法が多く、クリエイティブのトップに、外国人美術監督を据えるようなことは実はこれが初めてではなかった。


 イタリアの巨匠、ベルナルド・ベルトルッチ監督に心酔していた彼は、ベルトルッチ組の美術監督であるフェルディナンド・スカルフィオッティを『アメリカン・ジゴロ』(80)制作時にイタリアから呼び寄せ、視覚言語としてのスタイル作りを全面的に頼った。そして、同じ製作陣で臨んだ次作『キャット・ピープル』(82)によって、美術監督との特殊な信頼関係で進める方法を確立させることとなる。


 『キャット・ピープル』の次作は日本が舞台だった。そこでポール・シュレイダーは、英語圏出身でもなく、映像作品の美術監督自体が初めてというグラフィックデザイナー、石岡瑛子の起用に至る。そう考えると、本作『キャット・ピープル』は、「美術監督石岡瑛子」誕生前夜の、なくてはならない大切なピースであったという見方もできるのではないだろうか。




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