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『愛、アムール』ミヒャエル・ハネケ作品に通底するテーマ──その究極形態として描かれる「愛」

(c)Photofest / Getty Images

『愛、アムール』ミヒャエル・ハネケ作品に通底するテーマ──その究極形態として描かれる「愛」

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ジャン=ルイ・トランティニャン&エマニュエル・リヴァ



 「ハネケ映画」には名優の存在が欠かせない。舞台の演出家も経験しているハネケが、俳優の演技に非常に厳しいことはどれくらい知られているだろうか。各作品のメイキング映像で映し出される、彼の振る舞いを見れば一目瞭然だが、しばしばインタビューなどでも俳優の演技に言及している。


 とくに、パリを舞台に製作された群像劇『コード・アンノウン』は、本国オーストリアを離れて大変だったのだろう。『ドキュメンタリー 映画監督ミヒャエル・ハネケ』(13)では、同作の製作現場の様子が克明に捉えられている。気に入る「OKカット」が撮れてはしゃぐ姿はいつまでも映画青年のようだが、彼の気に入らない芝居ばかりする役者に対する態度は、まさに“鬼演出家”である。エキストラにまで厳しく演出をつけているのだから、彼のこだわりや、映画製作における厳格さが手に取るように分かる。


 そんな『コード・アンノウン』ではジュリエット・ビノシュが参加し、続く『ピアニスト』ではイザベル・ユペールにブノワ・マジメルが参加。『タイム・オブ・ザ・ウルフ』(03)ではベアトリス・ダルと、ベルギーの名優オリヴィエ・グルメが出演し、ハリウッドにてセルフリメイクした『ファニーゲーム U.S.A.』(07)には、ナオミ・ワッツやティム・ロスが登場している。この並びを見れば明らかだが、「ハネケ映画」のいずれもが、名優たちによって支えられているのだ。



『愛、アムール』(c)Photofest / Getty Images


 本作『愛、アムール』に配されているのは、エリック・ロメールやフランソワ・トリュフォーらに愛されてきたジャン=ルイ・トランティニャンと、『二十四時間の情事(『ヒロシマ・モナムール』)』(59)のエマニュエル・リヴァ。このふたりが一組の老夫婦に扮し、「愛」の協奏曲を奏で上げる。妻・アンヌ(リヴァ)が病で倒れたことを機に、彼女と、夫であるジョルジュ(トランティニャン)の日常が変化していくさまが淡々と綴られていく。そして、彼らの娘役を務めているのは、「ハネケ映画」常連のイザベル・ユペールである。


 この仲睦まじい夫婦にやがて訪れるのは、不可避の老い、そして死だ。人間が最終的に到達するこの“老い”と“死”を体現できる俳優は、限られた存在である。それは、才能やキャリアによってのみなされるものではない。一個人として重ねてきた時間が物を言う。


 ちなみにリヴァは、先述したドキュメンタリーや、ハネケのインタビューが収録されている書籍「ミヒャエル・ハネケの映画術──彼自身によるハネケ」において、「私の最初の映画と最後の映画に『アムール(愛)』という言葉があるのは、美しい偶然だわ!」と口にしている(実際に彼女の最後の作品となったのは、2016年公開の『ロスト・イン・パリ』で、チャーミングな脚のダンスを披露している。つくづく役者とはすごいものだと思ったものである)。




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