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『ファイヤーフォックス』イーストウッド&アカデミー賞受賞スタッフ集結の冷戦スペクタクル大作

© 1982 Warner Bros. entertainment inc. All rights reserved.

『ファイヤーフォックス』イーストウッド&アカデミー賞受賞スタッフ集結の冷戦スペクタクル大作

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ベレンコ中尉亡命事件



 ソ連のベレンコ中尉がミグ25で函館に亡命してきた事件も衝撃だったが、この映画では、ソ連の架空の新鋭機ミグ31“ファイヤーフォックス”を米国のパイロットが奪って飛び立つ、というさらなる衝撃の作戦が描かれる。原作のクレイグ・トーマスは、冷戦さなかに起きたベレンコ中尉の亡命事件を基に、原作小説を書き上げたとも言われているし、米国で1977年に同著が発売された際には、ベレンコ中尉の亡命事件を宣伝材料に、異例の初版23万部を発行したとも言われる。


 ベレンコ中尉の亡命事件は、昭和51年(1976年)9月6日午後に起きた。北海道は函館市の函館空港にソ連の幻の新鋭機ミグ25が1機、強行着陸。パイロットはチュグエフカ基地から飛来したベレンコ・ビクトル・イワノビッチ中尉で、米国へ亡命する途中、機体の燃料切れのため、やむなく函館空港へ強行着陸したというものだ。この事件で、低空侵入に対する我が国の“空の弱点”も露呈し、専守防衛の甘さが指摘されるなどしたが、当のベレンコ中尉はいち早く米国亡命が認められ、事件の数日後にはアメリカの地を踏んでいる。とにかく当時の西側諸国は、脅威とされたソ連の幻のミグ25が降ってわいたことで、すぐさま機体の調査を実施するわけだが、それが西側の予測を大きく下まわる代物だったことは、ここでは割愛しよう。



『ファイヤーフォックス』© 1982 Warner Bros. entertainment inc. All rights reserved.


 映画に登場するソ連の架空の新鋭機ミグ31(実際のミグ31“フォックスハウンド”とは別物)は、ソ連が極秘裏に開発している本作の主役メカで、ミグ25の後継機という設定。最高速度はマッハ6、アンチ・レーダー・システムによるステルス性能、何より思考管制システムを備えているなど、西側諸国のどこにも類似機のない新鋭機である。パイロットが頭の中で指令を発するだけで、機体が自動的に操縦、戦闘をやってのける、という驚くべき性能を有しており、西側諸国がこれに匹敵する戦闘機を開発しようとしても、十数年はかかるとか。ベレンコ中尉も驚きの高性能機である。これを盗み出そうというのが本作のメインの筋書きだ。


 ちなみに、映画のために作製されたミグ31のモデルは全部で9機。ジョン・ダイクストラのチームは、大型モデルを4機、小型モデルを4機、精密機器を内蔵している実物大モデル1機を制作し、映画の場面にあわせて使い分けた。また、4機の大型モデルのうち2機は、実際に飛行できる性能があり、それらを駆使して描きあげた特撮シーンは、いまでこそチープな印象だが、その当時の映画技術を考えれば、いかに難しい表現だったかが分かる。



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