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『ファイヤーフォックス』イーストウッド&アカデミー賞受賞スタッフ集結の冷戦スペクタクル大作

© 1982 Warner Bros. entertainment inc. All rights reserved.

『ファイヤーフォックス』イーストウッド&アカデミー賞受賞スタッフ集結の冷戦スペクタクル大作

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スパイ劇調の前半、空中戦の後半



 イーストウッド演じるミッチェル・ガントに呼び出しがかかる。ガントはベトナム戦争の英雄であり、優秀なパイロットだが、心に傷を負っており、いつ放心状態になるか分からない。そういう弱点はあるものの、米空軍の極秘部隊ではミグ25の飛行訓練も受けていたので、今回の任務の適任者は彼以外には考えられそうにない。指令はミグ31の奪取。ソ連のビリアリスクにある工場には2機のミグ31がある。このうちの1機をまんまと奪い取ろうというわけだ。協力者はミグ31の設計にたずさわったソ連の科学者や、反体制ユダヤ人グループ。


 前半は、輸出代理業者に変装してモスクワに潜入したガントが、KGB(ソ連国家保安委員会)の魔の手をかわして基地に侵入、首尾よく機体奪取に成功するまでだが、ここはジェームズ・ボンドさながらのスパイ劇調で、なかなか楽しめる。ウィーンの地下鉄をモスクワに見たて、ソ連KGBとの追っかけアクションを描いているが、これが後半になると雰囲気は一変。最高速度マッハ6の、空のスペクタクルに変貌する。



『ファイヤーフォックス』© 1982 Warner Bros. entertainment inc. All rights reserved.


 後半は、ビリアルスクの工場からミグ31もろとも飛び立ったガントがソ連対空迎撃網をくぐりぬけ、いよいよ米国へ帰還しようとするところが描かれる。途中、燃料が尽きようとするギリギリのラインをスリル満点に描き、敵地でどうやって燃料補給をするのか、という先の読めない物語にハラハラさせられる。どうにか燃料補給には成功するも、その先にはミグ31同士の一騎打ちが待っている。


 ガントを逃がすまいとファイヤーフォックス2号機が追いすがる。新鋭2機がスクリーン狭しと激闘するマッハの世界での空中戦だ。ここでは、ジョン・ダイクストラらの仕事がものをいわせており、これぞ娯楽映画の真骨頂と言わんばかりの素晴らしい特撮を味わえる。冷戦下における米ソ間の駆け引きを描いた映画は数多あるが、ここまでユニークな冷戦映画はなかなか無いのではないかという気がするし、現代の映画技術でリメイクしたらどうなるか、というのも少し気になる作品である。


<参考>

映画『ファイヤーフォックス』Blu-ray/DVD,映像特典

映画『ファイヤーフォックス』劇場用プログラム

「北海道新聞」昭和51年(1976年)9月7日,



文:Hayato Otsuki

1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「リアルサウンド映画部」など。得意分野はアクション、ファンタジー。



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作品情報を見る




『ファイヤーフォックス』

ブルーレイ 2,619円(税込)/DVD特別版1,572円(税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

© 1982 Warner Bros. entertainment inc. All rights reserved.

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