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  4. 『15時17分、パリ行き』映画を次のステージへと進化させようとするイーストウッドの野心作※注!ネタバレ含みます。
『15時17分、パリ行き』映画を次のステージへと進化させようとするイーストウッドの野心作※注!ネタバレ含みます。

『15時17分、パリ行き』映画を次のステージへと進化させようとするイーストウッドの野心作※注!ネタバレ含みます。


事件のシーンで起用した役者はテロリストだけ



 主人公はアメリカ空軍の衛生兵スペンサーと、オレゴン州の州兵アンソニー、大学生のアレクの3人だが、彼らは全て事件の当事者、つまり本人が演じている。当初イーストウッドは3人をアドバイザーとして雇い、彼らの役はプロの俳優に演じさせる予定だった。しかし、彼らと話し込むうち「君たちが自分自身を演じてみないか」と持ちかけたという。




 さらに、列車内で事件に遭遇した他の乗客たち、現場にかけつたけ警官たちも、全て本人たちに連絡をとり、実際に出演させてしまった。テロの現場を再現するのに雇った役者はテロリスト役だけだった。イーストウッドは本人に演じさせることで、演技者には決して出せない独特のリアリティを映画に生み出すことを狙ったのだろう。しかし事件の当事者が映画に主演するという手法は過去の作品にいくつもある。この作品が衝撃的なのは中盤の展開だ。


観客は何を見せられているのか?



 映画の中盤、主人公たちはヨーロッパ旅行に出かける。この旅行の最中にテロ事件に遭遇するのだが、それまでの40分は彼らの旅の様子が、事実に沿って淡々と描かれる。ヴェネチアでは魅力的な女性と出会い、彼女との旅の様子も描かれるが、彼女はあっという間に物語から退場し、その後2度と出てこない。




 観客は画面に映るものは何らかの意味があるという約束のもとに映画を見ている。登場したキャラクター、語られるエピソードには全て意味があり、物語の起承転結の「結」の部分で必ず、その意味が解き明かされるのだと。しかし、『15時17分、パリ行き』では観客との約束は全く果たされない。それはそうだ。これは様々なジャンル映画の定型を破壊してきたイーストウッドが遂に挑んだ、「映画という物語を語る装置」への改変行為なのだから。


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