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『モンタナの目撃者』 絶体絶命の状況下で際立つ、テイラー・シェリダン流の”ボーダーライン”
物理的、精神的なボーダーラインを超えていく主人公
一方、シェリダン作品では「境界線を超える」という行為や決断が大きな意味を持つ。
たとえば、『モンタナの目撃者』の少年はこれまで慣れ親しんだ生活から離れて暮らすことを決意し、アンジェリーナ・ジョリー演じる主人公は何が起ころうとも少年を守り抜こうと命をかける。本作に登場する父親たちもまた、親としての覚悟を行動で示そうと各々のボーダーラインを超えていく。
さらにいうと、これらの舞台となる地域もまた、厳しい自然環境が人間の法や常識といったものを遥かに凌駕する場所だ。
『モンタナの目撃者』© 2021Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
登場人物たちは危険を承知で境界線を踏み越え、この地ならではの「生き残るための術や知恵」を駆使しながらサバイバルに徹しなければならない。そういう瞬間をリアリティたっぷりに創出するからこそ、シェリダンの紡ぐ物語はどれも、頭で考える以前に心と体が条件反射するような、特殊かつ本能的な作りを成しているのだろう。