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『荒野の用心棒』レオーネとイーストウッド。異質な才能同士がぶつかって生まれた、マカロニ・ウェスタンの代表作

(c)Photofest / Getty Images

『荒野の用心棒』レオーネとイーストウッド。異質な才能同士がぶつかって生まれた、マカロニ・ウェスタンの代表作

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巡り巡ってイーストウッドに回ってきた、初主演作



 今でこそ『荒野の用心棒』といえばクリント・イーストウッドの出世作として名高いが、彼はセルジオ・レオーネのファースト・チョイスではなかった。当初検討されていたのは、ヘンリー・フォンダ。『荒野の決闘』(46)や『十二人の怒れる男』(57)をはじめ、“アメリカの良心”を演じ続けてきたこの名優が、正体不明の流れ者を演じることになれば、意表をつくキャスティングになるはず!…と考えたのだ。


 いかにも非アメリカ人らしいアイデアだったが、エージェントは送られてきた脚本をヘンリー・フォンダを見せることもなく、「彼は出演できません」とにべもなく伝えたと言う。確かにハリウッドを代表するスターには、あまりにもリスクが高い仕事だった。なおヘンリー・フォンダは、後年レオーネの傑作西部劇『ウエスタン』(68)に出演。“アメリカの良心”に似つかわしくない悪役フランクを演じきり、新境地を開拓することになる。


『ウエスタン』予告


 レオーネは、続いてジェームズ・コバーンとチャールズ・ブロンソンにオファーを出す。しかしコバーンは破格のギャラを要求し、ブロンソンは「今まで見た中で最悪の脚本だ」とケンもホロロ。『荒野の七人』(60)に出演していた2人にも振られてしまう。


 いよいよ困ったレオーネは、大人気テレビドラマ『ローハイド』(59~65)で主役を演じていたエリック・フレミングにオファーするも、これもまた断られてしまう。いつまでも主役が決まらない負のスパイラル!だが歴史というものは、些細な偶然によって成り立つものだ。エリック・フレミングは、『ローハイド』の共演者に『荒野の用心棒』の出演を勧めていた。その人物こそ、クリント・イーストウッドだったのである。


 「ハリウッドの巨匠とばかり仕事をしていられるわけじゃない。だから、当時のわたしと同じような無名の、ないしは無名に近い人と仕事をしていた。たとえば、セルジオ・レオーネだ。当時はまだ古代ものの活劇を一本か二本撮っていただけだった。(中略)セルジオはすごくユーモアのセンスがあるというもっぱらの評判だった。『荒野の用心棒』の脚本を読んだとき、すでにそれは感じていた。新しいことにチャレンジするチャンスだと思った」(クリント・イーストウッドへのインタビューより引用*)


 クリント・イーストウッドがこの映画に出演するために提示した金額は、わずか1万5,000ドル。かくして、イーストウッド初主演映画が始動することになる。


*「孤高の騎士クリント・イーストウッド」(石原陽一郎 訳、フィルムアート社)




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