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『荒野の用心棒』レオーネとイーストウッド。異質な才能同士がぶつかって生まれた、マカロニ・ウェスタンの代表作

(c)Photofest / Getty Images

『荒野の用心棒』レオーネとイーストウッド。異質な才能同士がぶつかって生まれた、マカロニ・ウェスタンの代表作

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高くついた、『用心棒』非公式リメイクの代償



 セルジオ・レオーネの妻カルラは、当時のことをこんな風に回想している。


 「私は彼(セルジオ・レオーネ)と『用心棒』を観に行って、彼はすぐにそれを西部劇に置き換えたいと思ったの。『用心棒』がとても気に入ったのね。(中略)興奮して言うのよ。“知ってるかい。『用心棒』のストーリーの元はアメリカの小説だぜ。あの話をもう一度アメリカに戻せたら、いいだろうなあ”」(カルラ・レオーネへのインタビューより引用*)


 レオーネが「元はアメリカの小説」と言っているのは、ダシール・ハメットの「血の収穫」のこと。鉱山の町パースンヴィルにはびこるマフィアを一掃するため、探偵コンチネンタル・オプが知略をめぐらすハードボイルド小説だ。黒澤明はこの作品からインスパイアを受け、痛快無比な時代劇を作り上げる。アメリカの小説を日本の映画監督が時代劇に換骨奪胎し、それをイタリアの映画監督がさらに西部劇としてリメイクした、という訳だ。ややこしい。



『荒野の用心棒』(c)Photofest / Getty Images


 レオーネは『用心棒』を徹底的に研究し、シナリオ構成やアクション演出を自家薬籠中のものとする。だが『荒野の用心棒』は、非公式の『用心棒』リメイク作品にしては、あまりにもオリジナルに忠実すぎた。著作権侵害で黒澤明と共同脚本家の菊島隆三に訴えられてしまい、ナンダカンダで世界興収15%の利益を黒澤側に支払うことになる。これにはさすがのレオーネも恨み節と思いきや、意外にもアッサリとしたコメントを残している。


 「私のプロデューサーは優秀ではなかったよ。わずかな金額で満足しただろうに、黒澤に権利金を払うのをすっかり忘れていて、何百万もの違約金を払って彼を金持ちにしなければならなかったんだからね。しかし、世の中はそういうものさ」(セルジオ・レオーネへのインタビューより引用)


*「セルジオ・レオーネ―西部劇神話を撃ったイタリアの悪童」(鬼塚大輔 訳、フィルムアート社)




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