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『由宇子の天秤』徹底的に“答え”を避けることで浮かび上がる、正しさの輪郭

©️2020 映画工房春組 合同会社

『由宇子の天秤』徹底的に“答え”を避けることで浮かび上がる、正しさの輪郭

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タイトルに込められた意味とは



 筆者はこの映画を見終わって、すっかり打ちのめされた。そして、『由宇子の天秤』というタイトルについて深く考え込んだ。もちろん字義通り解釈すれば、「まるで天秤のように二つの究極の選択で揺れ動く、あるドキュメンタリー監督の物語」ということなのだけれど、どうしても安易な解釈では収まりがつかなかったのだ。


 そういえば、司法の公正さを表すシンボルとして知られる「正義の女神像」の右手には社会を守るための剣が握られているが、左手には裁きの天秤が掲げられている(キムタクが主演した劇場版『HERO』に、やたら頻出していたアレです)。そう、天秤とはまさしく善悪を推し量るための象徴なのだ。



『由宇子の天秤』©️2020 映画工房春組 合同会社


 で、由宇子。ちょっと珍しい名前だが、これを分解すると、「由=よりどころ」、「宇=宇宙」、「子=子ども」となる。そう!『由宇子の天秤』とはすなわち、「果てしなく広がる宇宙で、正義のよりどころを求めてさすらう子ども」という意味なのではないか(超強引な解釈ですいません)。それはまさに、我々そのもの。由宇子とはあなた自身であり、あなたの身の回りにいる全ての人々を指し示している。


 全ての「正しさ」には必ず「正しくなさ」が含まれていて、全ての「正しくなさ」には少なからず「正しさ」が紛れ込んでいる。おざなりの教条主義に陥ることなく、徹底的に“答え”を避けることで、正しさの輪郭を浮かび上がらせようとする。徹頭徹尾抑制されたその演出に、筆者は春本監督の誠実さを見る。


 「私は誰の味方にもなれません。でも、光を当てることはできます」


 と、由宇子は語った。願わくは、この映画を観た全ての人たちに光があらんことを。



文:竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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『由宇子の天秤』

9月17日(金)渋谷ユーロスペース他全国順次ロードショー

©️2020 映画工房春組 合同会社

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