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『時計じかけのオレンジ』製作から50年超。キューブリックが遺したバイオレンスの愉悦に浸る

© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『時計じかけのオレンジ』製作から50年超。キューブリックが遺したバイオレンスの愉悦に浸る

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レイティングをめぐる紆余曲折



 こうした性質上『時計じかけのオレンジ』は、性描写や暴力描写をめぐって紆余曲折があった。同作の宣伝キャンペーンはMPAAのレイティング承認前におこなわれ、公開(1971年12月19日)の4日前にレイティング管理局は、キューブリックが最終的にカットしたとされるX指定版を問題視した。そのバージョンはアメリカの主要都市で9か月間公開されたが、公開の限定を解くためにキューブリックはR指定版の必要性を覚え、MPAAからR指定を取得するために作品を再編集している。


 アレックスと2人の女性が高速で性行為に至るショット、ルドヴィゴ療法でのレイプ再現シーンから計30秒が切り取られ、同じシーンからの控えめな映像に置き換えられた。ワーナーは1972年10月にX指定版を撤回し、クリスマス休暇の期間にR指定版を残りの市場にリリースできるようにした。批評家はMPAAが性的コンテンツの削減を要求し、映画の暴力描写に反対しなかったということに噛みついたが、結果として作品は大きなヒットとなった。



『時計じかけのオレンジ』© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.


 この措置によって『時計じかけのオレンジ』はキューブリックが移り住んだイギリスでも大成功を収め、ロンドンのワーナーウエストエンドシアターでは、1年間にわたって上映された最初の映画となった。しかしそんな興行成績にもかかわらず、『時計じかけのオレンジ』は1974年にイギリスでの流通から撤退することになる。上映中止となった理由は長年不明となっていたが、キューブリックの養女であるカタリーナが、父の人生や映画についてファンからの質問に答えるFAQサイトで、キューブリックが本作によって彼と家族に対して殺害の脅迫を受け、それが映画を撤回した原因だと明らかにした。理由は暴力描写に対する抗議的な意思を含んでおり、その影響力のほどがうかがえる。


 結局『時計じかけのオレンジ』がイギリスで再リリースされたのは、キューブリックの死から1年を経た2000年3月。撤退から26年後のことである。現在我々が接することのできるバージョンはX指定版で、R指定版はアメリカで最初に発売されたビデオソフトとレーザーディスクで、一時期確認することができた。


参考:

映画監督スタンリー・キューブリック』ヴィンセント・ロブロット/著 浜野保樹・桜井英里子/訳(晶文社)

Rodney Hill, Gene D.Phillips “The Encyclopedia of Stanley Kubrick”(Facts on File)



文:尾崎一男(おざき・かずお)

映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

Twitter:@dolly_ozaki



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『時計じかけのオレンジ』

【初回限定生産】<4K ULTRA HD & ブルーレイセット>(2枚組)6,980円 (税込)

発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント

© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

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