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『時計じかけのオレンジ』製作から50年。キューブリックが遺したバイオレンスの愉悦に浸る

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『時計じかけのオレンジ』製作から50年。キューブリックが遺したバイオレンスの愉悦に浸る

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4K化されたキューブリックの近未来ポストノワール



 スタンリー・キューブリックの偉大なるマスターピース『時計じかけのオレンジ』(71)が4K UHD Blu-rayでリリースされた。ソフト化にあたっては彼のアシスタントを長年務めてきたレオン・ヴィタリ(彼の人となりはドキュメンタリー『キューブリックに魅せられた男』(17)に詳しい)が監修。35mmカメラのオリジナルネガを新たに修復・リマスターし、キューブリックが推奨する1.66:1のアスペクト比が維持され、故人の感性を尊重したレストアがなされている。


 本作はそのほとんどをロケで撮影し、そのため自然光のもとで撮影できるよう、キューブリックと撮影監督のジョン・オルコットは新しい高感度レンズ(f0.95)を採用。加えて現場の実用照明をフォトフラッド電球に替え、それをライティングの補助として使用した。こうした痕跡が、ディテール表現の豊かになった4K版で実感できる。


 本作の特徴は、手持ちや360度の旋回カメラワークによるラフな映像スタイルだが、それは実用照明をライティングに使ったことで、スタジオ照明を必要とせず機動的なカメラワークを得たのである。こうしたバックステージも、高解像度によって鮮明となった画からはうかがえるのだ。


『時計じかけのオレンジ』予告


 またサウンドに関しても、本作はドルビーAタイプのノイズリダクションを採用した最初の作品である(本作は同録中心で、セリフなどをより聞き取りやすくするためだった)。ミキシングプロセス中のノイズの蓄積を防ぐために、全てのプレミックスとマスターレコーディングでそれは使用され、映画音響史においても重要な位置付けにある(リリース形態はドルビーでエンコードされていない標準のアカデミーモノラル・サウンドトラック)。5.1chステレオにリミックスされたこの最新版からでも、そのこだわりは充分に確認することができるだろう(4K UHD Blu-rayにはオリジナルのモノラルトラックも収録されている)。


 ちなみにキューブリック作品は本作を起点に『バリー・リンドン』(75)『シャイニング』(80)そして『フルメタル・ジャケット』(87)とモノラルでリリースされ、監督がステレオ音声に対して懐疑的だという説を生んだ。しかしこれはポストプロダクションに時間をかけすぎ、ステレオミックスをパスしたことによるもので、監督自身は肯定的な姿勢だったという(現に『バリー・リンドン』はドルビー社の技術的な支援のもとドルビーステレオで録音された)。なので光学メディアでのリリースにおける5.1chステレオ化を、禁欲的に否定することはないと個人的には思う次第だ。




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