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『時計じかけのオレンジ』製作から50年。キューブリックが遺したバイオレンスの愉悦に浸る

© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『時計じかけのオレンジ』製作から50年。キューブリックが遺したバイオレンスの愉悦に浸る

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様式化された暴力描写がもたらすもの



 「誤解を恐れずに言うならば、『時計じかけのオレンジ』は暴力の楽しさを教えてくれた。スタイリッシュに磨き上げられた暴力はすばらしく魅力的なのだと、キューブリックは見せてくれたのだ」


 作品に関しては、もはや語るだけ語り尽くされた感もあり、なにをトピックに紹介を展開していいか迷うが、翻訳家にして映画評論家の柳下毅一郎氏は、アンソニー・バージェスの翻訳原作小説(ハヤカワ文庫:刊)のあとがきにて、この映画の魅力を正鵠を射た形で指摘している。


 『時計じかけのオレンジ』はキューブリックの前作『2001年宇宙の旅』(68)と同様、既成曲(主にクラシック)を流用、あるいはアレンジ演奏してシーンに付帯させている。それは冒頭の、遺棄されたカジノでのレイプと格闘シーン、水際で主人公アレックス(マルコム・マクダウェル)が仲間たちに制裁をくだすスローモーションに流れるロッシーニの「泥棒かささぎ」序曲や、彼の暴力衝動を喚起させるベートーヴェンの「交響曲第9番・ニ短調」など、どれもエキサイティングで興奮をさそう。



『時計じかけのオレンジ』© 1971/Renewed © 1999 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.


 同時にそれはバイオレンスを魅惑的に様式化し、観る者をアレックスの意識と同期させていく。そのため著名な映画評論家のポーリン・ケールは公開時「キューブリックはレイプと殴打を楽しむことを意図している」と非難した。しかしこの映画の皮肉なトーンは、バイオレンスから血の匂いを感じさせるものではなく、コミカルかつ狂騒的で、個人の自由意志に厳格な社会的条件を課すことの有害性を、むしろ大いに示唆している。


 加えて『2001年宇宙の旅』との関連で言うならば、前者はヒトザルがモノリスによって知能発達を遂げ、そして宇宙時代へ飛び人工知能の謀反を経て、光の回廊を抜けスターチャイルドへと進化していくのに対し、後者は暴力に明け暮れる主人公アレックスを、政府が治療で抑制しようとし、果てはまた暴力性を解放させていくという、俯瞰すると発展の構成が似ているところに改めて面白さを覚える。私感であるにせよ、神がかった映画と悪魔憑きのような作品が、表裏一体でつながる興奮を、筆者は再見するたびに感じるのだ。バイオレンスの愉悦とともに。




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