難題に立ち向かったジョン・スタージェス
ジョン・スタージェスは、他にも問題を抱えていた。脚本があまりにも抽象的で曖昧だったために、クライマックスでガンマンたちがどの順番で、どのように殺されるのかが明確ではなかったのだ(脚本家が3人も入れ替わっているのに、どういうことだ!)。
頭を抱えたスタージェスは、熟考のすえにあるアイディアを思いつく。リー(ロバート・ヴォーン)、ハリー(ブラッド・デクスター)、オライリー(チャールズ・ブロンソン)、ブリット(ジェームズ・コバーン)…。彼らが死ぬ順番を、キャスティングが決まった順番にしようと考えたのだ(ロバート・ヴォーンが「最初に死ぬのは嫌だ!」と駄々をこねたため、最終的にはハリーとリーの順番は入れ替えられた)。
ガチガチに演出プランを決めるのではなく、できるだけ役者の即興芝居を受け入れるようにもした。例えば、リーが壁を滑り落ちるように死んでいくシーンは、ロバート・ヴォーンの完全アドリブ。ジョン・スタージェスは、ロバート・アルドリッチのようにハッキリとしたスタイルを押し出すのではなく、ストーリーの中で最善と思われる方法を、役者たちと一緒に探っていったのである。それだけこの作品には、即興芝居ができる俳優たちが揃っていたともいえるだろう。
『荒野の七人』(c)Photofest / Getty Images
四苦八苦して創り上げた『荒野の七人』だが、公開当時は酷評の嵐。興行的にも大失敗となってしまった(ヨーロッパでは大ヒットとなり、最終的には黒字となっている)。しかし、『七人の侍』をメキシコの農村に換骨奪胎したストーリーの面白さ、ジョン・スタージェスの王道かつ骨太な演出、そして7人のガンマンたちを演じた俳優たちの溌剌とした芝居が次第に評価されるようになり、現在では西部劇を代表する一本に。作品に感激した黒澤明が、ジョン・スタージェスに儀礼用の刀を贈ったというエピソードも伝わっている。
そして晩年になって、仲違いをしていたユル・ブリンナーとスティーブ・マックイーンはようやく和解。癌に侵され、死の床についていたマックイーンは、ブリンナーに『荒野の七人』に起用してくれたことに感謝の意を述べたという。その友情と勇気!彼らは、文字通りマグニフィセント・セブンだったのである。
文:竹島ルイ
ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。
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