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『ワイルドバンチ』西部開拓時代の神話を破壊した、最後のウェスタン
『ワイルドバンチ』あらすじ
舞台は1913年のテキサス。パイク率いる強盗団が、銀貨を隠し持った鉄道事務所に押し入る。しかし鉄道会社に雇われたソーントンが、賞金稼ぎを引き連れて待ち伏せしており、バイクたちはメキシコへ逃走。そこで出会った革命派の将軍マパッチから、米政府の輸送列車を襲撃して武器を奪うよう依頼される。パイクたちは武器弾薬の強奪に成功するが、マパッチに裏切られて襲撃される。100人を超える軍隊を相手に、5人は死闘を繰り広げるのだった・・・。
Index
- 時代の外にいる男、サム・ペキンパー
- ヒロイズムとは無縁、血と暴力に彩られた西部劇
- 映画のダイナミズムを最大限までに発揮させる編集術
- ペキンパー節が炸裂した撮影現場
- 時代から取り残されようとしている男たちと、西部劇の終焉
時代の外にいる男、サム・ペキンパー
「言ってみればサムは今の時代の外にいる男だと思う。今日、彼が生きている自体が不思議なことさ。人類が月に飛んでいく時代に昔のガンファイターが生きているという感じなのだ」(ダスティン・ホフマンのインタビューより引用*)
いきなりダスティン・ホフマンのコメントからこの稿を始めさせて頂いたが、もちろん“サム”とはサム・ペキンパーのことだ。『わらの犬』(71)で仕事をした彼に対する、率直な人物評である。それだけダスティン・ホフマンの目には、時代遅れのアウトローに映ったのだろう。
サム・ペキンパーは、終生“血”と“暴力”を描き続けた孤高の映画監督である。Bloody Sam(血まみれのサム)とも称された残虐描写で、一部の映画ファンからは熱狂的に歓迎され、一部の保守的な映画批評家からは強烈な批判を浴びた。しかしながら、人の意見なんぞどこ吹く風。ペキンパーは己の映画に絶対の自信を持ち、決して妥協を許さず、終生そのスタイルを崩すことはなかった。
そして彼は、時代遅れということだけでなく、製作現場でのゴタゴタが絶えない“ハリウッドきっての反逆児”でもあった。作品のためなら、スケジュールや予算はガン無視。プロデューサーとケンカすることはしょっちゅうで、『シンシナティ・キッド』(65)ではお偉方に噛み付き、撮影3日目で解雇される憂き目を味わっている(監督はノーマン・ジュイソンに交替した)。
自信過剰、唯我独尊。確かにサム・ペキンパーは、俺様スタイルな映画監督だったのかもしれない。だが彼のインタビューなどを読む限り、少なくとも筆者はそのあまりに真っ正直で率直な物言いに、チャーミングな人間性を感じてしまう。
「最近、気に入った映画はありますか?」
「自分の作品だよ。俺はサイコーな映画を作っている」
「『ゴッドファーザー』」はどうですか?」
「見たことはないが、コッポラは大嫌いだ」
「なぜですか?」
「なぜなら、この映画は素晴らしいと聞いているけど、俺が好きになりたい映画は自分の映画だけだからだ。他のクソ野郎に良い映画を作って欲しくない」(サム・ペキンパーへのインタビューより引用)
*:「ニューシネマの映画作家たち―創作の秘密」(田山力哉著、ダヴィット社)