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伝説のカリスマ雑誌編集者の半生『素敵なダイナマイトスキャンダル』のバックボーンをもっと知りたい人に!

©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

伝説のカリスマ雑誌編集者の半生『素敵なダイナマイトスキャンダル』のバックボーンをもっと知りたい人に!

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『素敵なダイナマイトスキャンダル』あらすじ

バスも通らない岡山の田舎町に生まれ育った末井昭は、7歳にして母親の衝撃的な死に触れる。肺結核を患い、医者にまで見放された母親が、山中で隣家のひとり息子と抱き合いダイナマイトに着火&大爆発!心中したのだ――。末井はその後上京し、キャバレーの看板描き、イラストレーターを経て、小さなエロ雑誌の出版社へ。編集長として新感覚のエロ雑誌を創刊する。奮闘する日々の中で、荒木経惟に出会い、さらに南伸坊、赤瀬川源平、嵐山光三郎ら錚々たる表現者たちが末井のもとに参集する。発禁と創刊を繰り返し、「ウィークエンド・スーパー」、のちに伝説となる「写真時代」など、数々の雑誌を世におくり出していく…。


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コアなサブカルでエロ雑誌業界を席捲した、末井昭の青春物語



 2017年『 南瓜とマヨネーズ』をスマッシュヒットさせた異能の俊英監督、冨永昌敬の新作『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、いまは主にエッセイストとして知られる伝説のカリスマ的な雑誌編集者、末井昭(1948年生まれ)の半生をモデルにしたものだ。タイトルにある「ダイナマイトスキャンダル」とは、末井が故郷・岡山県の田舎で暮らしていた七歳の少年の頃、当時30歳の母親が年下の愛人とダイナマイト心中した事件を指す。


 そのあまりに衝撃的な実母の死は、以降の末井の自意識や人格形成などに多大な影響を及ぼしたらしい。映画では、青を基調としたモノトーンで綴られる1955年のパート――尾野真千子演じる母・富子の刹那的な愛と死の世界へ息せき切って走っていく姿が、柄本佑が快演(あるいは怪演!)する主人公・末井の人生において甘美な悪夢のように、あるいは生きざまのトーンを決定してしまう通奏低音のように、いつも付きまとう。この「母と息子」をつなぐ因果や宿業が、本作のひとつの主題となる。



『素敵なダイナマイトスキャンダル』©2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会


 その一方、『素敵なダイナマイトスキャンダル』という映画を覆うのは、実録物の楽しさであり、青春物語のワクワク感でもある。


 かつて末井昭が活躍した業界フィールドは、エロ雑誌と呼ばれるジャンルだ。しかし彼が編集長としてセルフ出版(現・白夜書房)で手掛けた『NEW self』(1975年創刊)、『ウイークエンドスーパー』(1977年創刊)、『写真時代』(1981年創刊)などは、実質コアなサブカル雑誌だった。エロであらゆるカルチャーを接続させるような、何でもアリの自由な方針で、発禁の憂き目にしばしば遭いながらも先鋭的な特集や記事をがんがん展開していった。ちなみに『ウイークエンドスーパー』のネーミングは、ジャン=リュック・コダール監督の『 ウイークエンド』(1967年)が元ネタである。


 末井が手掛ける誌面に登場したのはアラーキーこと写真家の荒木経惟、やはり写真家の森山大道、イラストレーター・エッセイストの南伸坊や安西水丸、美術家・作家の赤瀬川源平、編集者・作家の嵐山光三郎、作家の田中小実昌、評論家の平岡正明や上野昂志、現代美術家の秋山祐徳太子、時には漫画家の赤塚不二夫や岡崎京子、あのタモリまで、錚々たる大物もたくさん。まさに多士済々、群雄割拠の様相で、ミュージシャンでいえば三上寛、ヒカシューの巻上公一など、細かく拾っていけばキリがない。


 かくして末井の周辺は1970年代後半から80年代にかけて、アンダーグラウンドな文化人や、そのワナビー(著名人に憧れる予備軍やフォロワー)たちの梁山泊と化していたわけである。



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