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『チャイナタウン』この世の地獄を見た映画作家が、己のトラウマと対峙するフィルム・ノワール ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『チャイナタウン』この世の地獄を見た映画作家が、己のトラウマと対峙するフィルム・ノワール ※注!ネタバレ含みます。

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17万5千ドルのオファーを蹴って書き上げた、暗黒ノワール



 『チャイナタウン』は、ロバート・タウンによるオリジナル脚本作品だ。1969年当時、彼は『さらば冬のかもめ』(73)のシナリオに悪戦苦闘していた。そんなとき、ロサンゼルス・タイムズに掲載されていた「レイモンド・チャンドラーのL.A.」という記事を目にする。そこには、’30年代のロサンゼルスを再現した写真が飾られていた。古い街灯の下に佇むプリムスのコンバーチブル、パサディナの家に置かれたパッカード、ダウンタウンの古い鉄道駅。彼はこの数十年で、古き良きL.A.の風景がどれだけ失われてしまったのかを痛感する。


 「この30〜35年の間に、どれだけこの街が失われてしまったかを実感し、考えるようになった。(中略)『さらば冬のかもめ』が手詰まりだったので、ジャック(ニコルソン)に“30年代のロサンゼルスを舞台にした探偵小説を書いたらどうだろう?”と聞いてみた。彼は "素晴らしい "と言ってくれたよ。私は、この街を再現してみたかったんだ」(ロバート・タウンへのインタビューより引用


 ロバート・タウンはさっそくレイモンド・チャンドラーを読み漁り、ハードボイルド小説の“型”を徹底的に勉強。20年〜40年代の南カリフォルニアの歴史を綴った、『Southern California Country: Island on the Land』という書籍も大いに役に立った。『Water, water, water』というチャプターに書かれていた、行政の横暴がヒントになったのである。



『チャイナタウン 』(C) 1974 by Long Road Productions. All Rights Reserved.TM, (R) & Copyright (C) 2012 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 「皆の目の前にある犯罪を題材にして映画を描けばいいのではないか、と私は考えた。宝石をちりばめた鷹のような話ではなく(筆者注:ダシール・ハメットの探偵小説「マルタの鷹」)、水道の蛇口のような身近なものを題材にして、そこから陰謀が巻き起こる。そして、水を捨てて農民を飢えさせ、土地を奪うという彼らの行為を読んで、ビジュアルとドラマの可能性が非常に大きいことに気づいた。それがこの映画の始まりだったんだよ」(ロバート・タウンへのインタビューより引用


 実はロバート・タウンは、プロデューサーのロバート・エヴァンスから17万5千ドルという破格の条件で、『華麗なるギャツビー』の脚本を依頼されていた。だが彼はこのオファーを断り、報酬2万5千ドルで『チャイナタウン』のシナリオを執筆。9ヶ月かけて最初のドラフトを完成させる。そしてロバート・エヴァンスは、その演出にロマン・ポランスキーを指名したのだ。





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