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『The Hand of God』パオロ・ソレンティーノが若者たちに捧げる郷愁と希望の自伝映画

Gianni Fiorito

『The Hand of God』パオロ・ソレンティーノが若者たちに捧げる郷愁と希望の自伝映画

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これは『ソレンティーノのアマルコルド』か?



 しかしある出来事を境に、ファビエットの運命は急激に変化していく。マラドーナへの憧れは次第に薄れ、映画監督への漠然とした思いが徐々に形を成していくのだ。すでに劇中では、ファビエットが深夜のアーケード(ロケ地はナポリの観光スポット、ウンベルト1世ガレリア)で映画撮影に遭遇するシーンがイメージショットのように挿入されている。ガレリアの天井から人体が吊るされている衝撃の場面が、少年の心に映画の魔力を刷り込む重要なショットとなっている。


 そして、フィビエットの映画への興味は、俳優志望の兄マルキーノ(マーロン・ジュベール)がフェデリコ・フェリーニの『そして船は行く』(83)のオーディションに同行するのをきっかけに、さらに明確なものになって行く。このオーディションは事実に基づいていて、ソファに座って自分の番を待つ芸人たちの、いずれ劣らぬ強烈な個性比べは見ものである。彼らは全員、ソレンティーノが信頼するキャスティング・ディレクターが実際にナポリの街を歩いてスカウトした人たちだ。

 

『The Hand of God』Gianni Fiorito


 そんなこともあって多くのメディアは、フェリーニが生まれ故郷のリミニを舞台に撮った半自伝的作品である『フェリーニのアマルコルド』(73)と本作の類似性を指摘する。しかし、ソレンティーノはそれを真っ向から否定している。『アマルコルド』がおかしな記憶の連続であるのに対して(ソレンティーノ談)、『The Hand of God』はより現実的な生活を描いたものであり、観客と共に喜びと悲しみを共有するための作品だからだ。


 ナポリやカンパニアの風景と匂いの中で、生粋のナポリっ子たちが描く、少年の夢と挫折と新たな旅立ち。今やフェリーニの数少ない後継者としてイタリア映画の存命に貢献しているパオロ・ソレンティーノが、自らの少年時代をあえて詳らかにすることで、現代の若者たちに勇気を与えようする。同時にこれは、全世代が自分の人生を振り返る機会にもなるはずだ。


参考:

https://www.vanityfair.com/hollywood/2021/10/awards-insider-hand-of-god-cinematography

https://www.cineuropa.org/en/interview/410370/



文:清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。



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『The Hand of God』

劇場公開日:12月3日(金)

Netflix配信日:12月15日(金)

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