2021.12.04
『The Hand of God』あらすじ
1980年代ナポリ。少年ファビエット・スキーザの住む街に、伝説のサッカー選手ディエゴ・マラドーナがやってくる。優しい両親や個性溢れる親戚たちと平和に過ごしていたファビエットだが、突如悲劇が訪れ、無垢な少年時代は終焉を迎えるのだった。
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デビュー作以来のナポリ
2021年11月1日(月)、第34回東京国際映画祭の”ガラ・セクション部門”に出品された『The Hand of God』のジャパンプレミアで、嬉しいサプライズがあった。本編上映前に監督のパオロ・ソレンティーノから日本の観客に向けたメッセージ動画がスクリーンに映し出されたのだ。
監督はお馴染みの仏頂面を崩さず、それでも何かを伝えたいという強い思いを込めて、こう述べた。「これは未来に向けた物語です。今、厳しい時代を生きている世界の若者たちに、自分の人生を見出して欲しいと願っています。」
『The Hand of God』Gianni Fiorito
『The Hand of God』の舞台は、ソレンティーノの生まれ故郷ナポリ。この場所を描くのは監督デビュー作『もうひとりの男』(01)以来だ。自伝的な物語を紡ぐため、故郷に帰って自らの少年時代を描く。ともすると感傷的になりがちなこのテーマを、ソレンティーノは独特の映像と強烈な人物描写を駆使して、誰の目にも強く焼き付く少年の思い出と成長のドラマへと昇華している。
『グレート・ビューティ/追憶のローマ』(13)のエンディングを飾る世界遺産の幻想的な姿や、『グランドフィナーレ』(15)で高級スパに集う個性溢れる老人たちなど、『The Hand of God』にはそれらを想起させる印象的なショットや人物像が満載されている。そうして監督はその言葉通り、失われた時間への郷愁を漂わせつつも、未来への希望を予感させる珠玉の1作をここに完成させたのだ。