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『GUNDA/グンダ』五感を集中させることで世界のざわめきを感じる、至高の映像体験

© 2020 Sant & Usant Productions. All rights reserved.

『GUNDA/グンダ』五感を集中させることで世界のざわめきを感じる、至高の映像体験

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目を凝らし、耳をそばたてることで感じる、世界のざわめき



 筆者はこの作品を観ながら、「まるで、別の惑星の生態系を描いた作品のようだ」と感じた。人間はいっさい登場せず、そこには動物たちだけの世界が広がっている。極端な長回しは、我々観客の生理ではなく、豚や鶏の自然な生活のリズムに寄り添っているかのよう。モノクロームの映像によって映し出される動物たちの日常が、人間の支配から解き放たれた異世界の出来事のように感じられたのだ。 


 だが、途中でその考えは誤りであることに気づかされる。耳をそばたててみると、風のざわめきや雨音だけではなく、微かに機械音が聞こえる。スクリーンには映し出されないものの、確実にそこには人間の気配があるのだ。そして我々は、動物たちの耳にタグが付けられていることに気づく。彼らは自由を謳歌する大地の王者ではなく、あくまで家畜でしかないという現実。そしてラストシーンでは、人間がこの惑星の支配者であることが明確に示される(その意味は、ぜひ劇場でチェックしてみてください)。



『GUNDA/グンダ』© 2020 Sant & Usant Productions. All rights reserved.


 「音楽なし、ナレーションなし」と聞くと、客観性を排した自然主義的ドキュメンタリーのように思われるかもしれないが、本作は決してそのような作品ではない。ある結末に向かって、そして確実に湧き上がるであろう観客の感情から逆算して、極めて恣意的に作られている。フレーミング、ズーム、ドリーなど、周到に組み立てられたカメラワーク。集中して耳を傾けてみれば、自然音も精緻にコントロールされている。ビクトル・コサコフスキー監督の計算が隅々にまで行き届いているのだ。


 筆者は、できるだけ大きなスクリーンで、そしてできるだけ音響の良い映画館で、この作品に触れて欲しいと思う。『GUNDA/グンダ』は、目を凝らし、耳をそばたて、五感をスクリーンに集中させることによって、世界のざわめきを感じることができる作品だと思うからだ。それは、コサコフスキー監督の想いでもあるはず。


 「『コヤニスカッツィ』(82)や『8 1/2』(63)のような映画を大きなスクリーンで見たとき、これが私の人生であり、私はこの世界に属しているのだと確信しました。小さなモニターで映画を見たとしても、おそらく自分には合わなかったでしょう」(ビクトル・コサコフスキーへのインタビューより引用)


 「驚異の映像体験」という表現は今や手垢のついた常套句だが、筆者は『GUNDA/グンダ』がそれにふさわしい作品であること確信している。



参考:『GUNDA/グンダ』プレスデータ

https://filmmakermagazine.com/111265-a-question-of-empathy-viktor-kossakovsky-gunda/#.YadTfvHP2Es

https://moveablefest.com/viktor-kossakovsky-gunda/

https://www.bfi.org.uk/sight-and-sound/interviews/victor-kossakovsky-interviewed-gunda

https://www.gq.com/story/gunda-recommendation-victor-kossakovsky-interview

http://www.reverseshot.org/interviews/entry/2783/gunda_vk



文:竹島ルイ

ヒットガールに蹴られたい、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」主宰。



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作品情報を見る



『GUNDA/グンダ』

12月10日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

© 2020 Sant & Usant Productions. All rights reserved.

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