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“正統な続編”企画が期待される『ドニー・ダーコ』ディレクターズ・カットが解き明かす秘密とは!?※注!ネタバレ含みます。
"less is more"か、"more is less"か
ここまで見てきたように、オリジナル版では謎のまま残されていた多くの要素が、ディレクターズ・カットでは『時間旅行の哲学』のテキストが添えられ、解釈を助けてくれる。だが、『ドニー・ダーコ』が分かりやすい映画になることが果たしてよいことなのか、という疑問は残る。
ケリー監督は『The Donnie Darko Book』のインタビューの中で、オリジナル版の謎についてこう語っている。
「古い格言の『少ないほうが豊かである(less is more)』に習い、謎を保とうとした。何を明らかにし、何を隠しておくかを慎重に選んだ。多くの場合は予算の都合によるものだったが」
オリジナル版の『ドニー・ダーコ』には多くの謎が残されていたからこそ、観客は想像力を膨らませ、さまざまな解釈を楽しみ、カルト的人気を博していった。だが、DVDセールスが好調だったことでディレクターズ・カットが製作され、説明が加わって謎が減った分、解釈の余地が狭まってしまった("more is less"と言ってもいい)。なんとも皮肉ではないか。
フリーランスのライター、英日翻訳者。主にウェブ媒体で映画評やコラムの寄稿、ニュース記事の翻訳を行う。訳書に『「スター・ウォーズ」を科学する―徹底検証! フォースの正体から銀河間旅行まで』(マーク・ブレイク&ジョン・チェイス著、化学同人刊)ほか。
『ドニー・ダーコ』
ブルーレイ発売中
発売元:ポニーキャニオン/アスミック・エース/テレビ東京
販売元:ポニーキャニオン
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