Motion Picture Artwork (C)2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. (c) David Lee
『ジョン・ウィック』キアヌ・リーブス、グレイトアクターへの一歩を刻む新たな代表作
マトリックスとのつながりは必然
この『ジョン・ウィック』の監督、チャド・スタエルスキは、『マトリックス』(99)でキアヌのスタントダブルを務めていた人。その意味で、キアヌも全幅の信頼をおいて挑んだわけだが、『マトリックス』との共通点は他にいくつも存在する。ナイトクラブでジョンを撃つ役のダニエル・バーンハードは、『マトリックス:リローデッド』(03)のエージェント、ジョンソンを演じていたし、ジョンの傷を治療する闇医者役のダク・キムは、やはり『マトリックス:リローデッド』でキーメーカーを演じた人。劇中に登場するゲーム「Dust 514」のプレイヤー名が「ネオ」なんて密かなオマージュも発見できる。そしてご存知のとおり、『ジョン・ウィック』の2作目から、モーフィアス役のローレンス・フィッシュバーンが参加している。
オリジナルの脚本では、主人公が60代半ばという設定だった『ジョン・ウィック』だが、製作会社のトップが、60代のベテラン俳優を使うよりも、映画界における「ベテラン」をキャスティングしたいという意向を示したことで、キアヌを前提に脚本が書き換えられた。しかも当初の脚本では、キルカウントがわずか「3」だったという。
『ジョン・ウィック』 Motion Picture Artwork (C)2015 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. (c) David Lee
映画の冒頭で、ジョン・ウィックの家にロシア人たちが侵入するシーンがあるが、映画が公開された2014年、キアヌが眠っている自宅に、ストーカーの女性が侵入するという事件が発生した。キアヌは落ち着いて彼女を説得し、警察に通報。何事もなく逮捕に至った。こうした役とのシンクロもあって、ジョン・ウィックというキャラクターは、キアヌその人と一体化していったのだ。
『スピード』の頃、「グッドアクターを目指す」と言っていたキアヌ・リーブスは、『コンスタンティン』(05)でインタビューした際、「なんとかグッドアクターになれたかな。次はグレイトアクターが目標だ」と答えた。そして『ジョン・ウィック』でその目標がかなったのか再び聞くと、「いや、まだグレイトの域には達してはいない。でも、僕のこのキャリアは悪くないんじゃない?」と、どこか達観した余裕もみせるようになった。
「グレイトアクター」と呼ばれる日まで、キアヌの活躍はまだまだ加速することを、50代からスタートした『ジョン・ウィック』は予告したのである。
文:斉藤博昭
1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。
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