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ナンシー・マイヤーズ監督『恋愛適齢期』が、ロマンティック・コメディ業界に起こした革命

(c)Photofest / Getty Images

ナンシー・マイヤーズ監督『恋愛適齢期』が、ロマンティック・コメディ業界に起こした革命

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キャリアの大きな転換期となった『恋愛適齢期』



 『恋愛適齢期』の製作は、マイヤーズのキャリア上大きな転換期となった。この映画をつくる以前、マイヤーズの仕事には常に一人のパートナーの存在があった。同じく脚本家としてキャリアをスタートさせた、『花嫁のパパ』『花嫁のパパ2』の監督チャールズ・シャイア。彼はマイヤーズの夫であり、映画製作においても大事なパートナーだった。


 二人はアカデミー賞最優秀脚本賞にもノミネートされた『プライベート・ベンジャミン』で共作した後、シャイアの監督デビュー作『ペーパー・ファミリー』(84)以降、多くの映画で一緒に脚本を書き、コンビとして映画製作を続けていった。マイヤーズが初めて監督を務めた『ファミリー・ゲーム/双子の天使』でもシャイアは脚本執筆に協力している。だが二人の娘をもうけた後、1999年に二人は離婚。奇しくもマイヤーズの監督デビューと同時期に二人の協働体制は解消することになった。



『恋愛適齢期』(c)Photofest / Getty Images


 監督前2作では与えられた企画をもとに、共同脚本またはリライトという形をとっていたマイヤーズにとって、『恋愛適齢期』は完全に一人でオリジナル脚本を書き上げた初めての映画となった。本人曰く、初めて一人きりで脚本を書いたことで何より感じたのは孤独さだったという。それまで、ひたすら夫婦で喋りあい、その会話をもとに脚本を生み出してきた彼女にとって、一人きりで登場人物たちの会話をつくり整理していくのは、想像以上に難しい作業だった。


 10か月をかけて書かれた『恋愛適齢期』の脚本は、これまでになくマイヤーズ自身の人生に肉薄した内容となった。ダイアン・キートンが演じるエリカは、当時のマイヤーズと同じ50代。娘を一人もうけた後、演出家の夫と離婚。劇作家としてたしかな評価を得ている彼女は、元夫とも良好な関係を築き、悠々自適なシングル生活を送っている。娘のボーイフレンドと恋に落ちたり、年下の優しい医師に愛されたり、という物語自体はフィクションだとしても、ここに描かれるエリカの日常や設定は、映画の製作当時のマイヤーズとよく似ている。その後、マイヤーズは自作において一人での脚本執筆を続けている。本作で掴んだ新たな執筆方法が、その後に生かされていったのかもしれない。



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