30年以上待って実現した作品
最初に本作の映画化が持ちあがったのは今から40年ほど前のことだった。イーストウッドにこの企画が持ち込まれた時、さすがに自分が演じるには若すぎると断り、ロバート・ミッチャムの出演を考えたという。しかし結局そのときは実現せず企画は棚上げとなった。それでもイーストウッドは折に触れ「あの脚本はどうなっている?」と気にかけていたという。そして90歳を迎えた頃、ようやく映画化に動き出す。
「自分はそろそろメキシコシティに行って子供を誘拐するのに良い年頃だと思ったのさ」※2
『クライ・マッチョ』© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
製作の動機をイーストウッドはそう語るが、気に入った脚本があれば、自分が主役を演じるのに相応な年齢に達するまで待ち映画化する。それは彼の常套手段だ。アカデミー作品賞と監督賞をイーストウッドにもたらした傑作『許されざる者』も、自らが主人公を演じるのに相応しい年齢(当時60代前半)まで映画化を待ったのは有名な話だ。
ではイーストウッドは何にひかれ、本作の映画化を粘り強く待ったのだろうか?それは今まで彼が繰り返し描いてきた「師弟」というテーマと大きく関係している。