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『クライ・マッチョ』イーストウッドの弟子、ラフォ少年の眼差しと同化する体感映画

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『クライ・マッチョ』イーストウッドの弟子、ラフォ少年の眼差しと同化する体感映画

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『クライ・マッチョ』あらすじ

1979年のテキサス。かつてロデオのスターだったマイク・マイロ(クリント・イーストウッド)は、落馬事故で大けがを負ってからは半ば隠遁者のような生活を送っていた。そんなある日、マイクは元の雇い主からこんな依頼をされる。「メキシコに行き、離婚した妻と暮らす息子を連れ戻してもらいたい」。彼に恩義を感じるマイクは渋々ながら誘拐すれすれの依頼を引き受けることになるー。


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名脚本家からの酷評



 『クライ・マッチョ』はクリント・イーストウッドの監督デビュー50周年、40本目となる記念すべき作品だ。91歳になるまで1~2年に1本という製作ペースを崩さず、常にハイクオリティな映画を我々に届け続けるレジェンドには脱帽するしかない。


 さらに本作が大きな期待を持って迎えられたのは、『許されざる者』(92)以来となる久しぶりの「西部劇」だったからだ。


 1979年のテキサス。かつてロデオのスターだったマイク・マイロ(クリント・イーストウッド)は、落馬事故で大けがを負ってからは半ば隠遁者のような生活を送っていた。そんなある日、マイクは元の雇い主からこんな依頼をされる。「メキシコに行き、離婚した妻と暮らす息子を連れ戻してもらいたい」。彼に恩義を感じるマイクは渋々ながら誘拐すれすれの依頼を引き受けることになるー。


『クライ・マッチョ』予告


 19世紀を舞台とする本格西部劇ではないが、テキサスとメキシコを舞台に、イーストウッドがカウボーイを演じるとなれば、「待ってました!」と言いたくなるファンも多いだろう。しかし、『クライ・マッチョ』にかつての西部劇の香りを期待すると肩透かしを食うだろう。そのためか本作の評価は分かれ、とりわけ『タクシー・ドライバー』(76)などで知られる脚本家・監督のポール・シュレイダーはFacebookで厳しい意見を表明した。


 「クリントは、『マッチョであることは無益なことだ』と、いくつかの決め台詞で表明している。でもそれは「縮んだダーティハリー」が言っているから価値があるくらいのものだ。(中略)まるで犯罪者が自分の刑を軽くしてもらえるよう、犠牲者の家族に謝罪をしているのを裁判官が聞かされているようだ」※1


 あまりにも辛辣な意見だが、そう言いたくなる気持ちも理解はできる。『クライ・マッチョ』は近年のイーストウッド監督作のなかでもひと際地味で淡白な印象がある。『アメリカン・スナイパー』(14)のようなアクションはもちろん、『ハドソン川の奇跡』(16)や『リチャード・ジュエル』(19)のようなサスペンスは望むべくもない。


 しかし、そもそも本作にそんなエキサイトメントを求めるのは間違っている。なぜなら本作は91歳の「今のイーストウッド」を見つめる視線によって構成された、イーストウッドそのものを味わう作品としてデザインされているのだから。




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