(c) 2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』ジョー・ライトが描いた二つの“ダンケルク”
2018.04.05
ジョー・ライトが『つぐない』で描いたもう一つの“ダンケルク”
実は、ジョー・ライトが“ダンケルク”を描くのはこれが初めてではない。すでに多くの方がご存知のように、彼はアカデミー賞にもノミネートされた傑作映画『
つぐない』のハイライトというべき部分で1940年の“ダンケルク”の海岸をしっかりと描いている。それは『ダンケルク』のような戦闘シーンではないものの、海岸で救助船を待ち続ける何万もの兵士たちを詩的に紡ぎだす圧巻の情景だ。しかも5分間に及ぶ長回し。観る者の胸を打ち、知らない間に涙すらもたらす、映画史に残る奇跡的なワンシーンと言っていい。
この“長回し”はライト監督がクルーの結束力を高めるためによく利用する術なのだが、それ以上に、ここの場面ではジョー・ライト作品に欠かせない二つの要素が刻印されている。それが“歩く”という極めてシンプルな身体運動と、“ふわりと浮遊するかのようなカメラワーク”である。
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(c) 2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
最初はジェームズ・マカヴォイ演じる主人公らが延々と歩き続ける動きにカメラがしっかりと寄り添っているのだが、ふとした瞬間、カメラが意志を宿したかのように彼らの元をフワリと離れ、しばし魂が浮遊するかのような動きで独自に動き回り、またいつしか再び主人公らの元へと舞い戻っていくのだ。