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ジョー・ライトが描いた二つの“ダンケルク”『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

ジョー・ライトが描いた二つの“ダンケルク”『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』


歩きがもたらす意志とリズム、そして浮遊するカメラワーク



 歩くということ。そして浮遊するカメラワーク。様々なジョー・ライト作品を鑑賞する上で、この二つの要素は重要な鍵となる。例えば、映画監督デビュー作『 プライドと偏見』の冒頭では、ヒロインのキーラ・ナイトレイの“歩き”にカメラがしっかりと寄り添っていく。ただそれだけのショットの中に様々な情緒が盛り込まれ、なおかつ歩調が生み出す躍動感がこれまでにない新たな語り口を予感させるものとなる。


 また、浮遊するカメラワークは『 PAN』で子供達が宙を舞う場面でも印象的に炸裂していたのを思い出す。浮遊したカメラワークは時に、天高い位置から地上を俯瞰する際に用いられることも多い。この映像もまたジョー・ライト作品を見続けている人にはお馴染みの光景だ。


 当然ながら、この『ウィンストン・チャーチル』にもトレードマークははっきりと見て取れる。本作は特に、チャーチルの屋敷内や首相官邸、省庁内、そして国会議事堂の議場内などが物語の舞台となる場面が多く、これらの閉所空間にてジョー・ライトは主人公を意識的に歩かせ、作品内に活力あるリズムと主人公の強い意志を呼び込んでいるように思える。さらに議会の天井から最下部までをふわりと移動するカメラワークを使い、その現場の臨場感を巧みに描写していく。これらの演出が絶妙に呼応しあうことで、まるで一つの有機体のような現場や状況が生まれるのである。




 前作『PAN』ではいささか大風呂敷を広げすぎてしまって興行的な失敗を招いたライト監督だが、『チャーチル』ではもう一度原点に立ち戻って、再び自らの足元をしっかりと見つめることを忘れなかった。その結果、これまでで最も制御された作品世界において、「今まさに歴史が動くダイナミズム」という最も難易度の高いワザが見事なまでに炸裂することとなった。限定空間で予想もつかないドラマを巻き起こす。これがジョー・ライトの真の底力なのである。


 ちなみにライトは“操り人形”一家に生まれ、のちに両親が創立するザ・リトル・エンジェル・シアターにて育った特殊な経歴の持ち主である。舞台の上方からピンと張られた糸で手足が制御され、重力に逆らいながらふわりふわりと個性的な動きを繰り出していく人形たち。環境が人の感性を形作るとはよく言われるが、もしかすると、あのジョー・ライト特有の“浮遊するカメラワーク”の原点も“操り人形”の動きにあるのかもしれない――そう推論を立てたくなるほど、ライトの紡ぐ世界はやはり独特で、他には決して真似できないユニークさがある。


 最高傑作との呼び声の高い『ウィンストン・チャーチル』もまだライトにとってゴールではない。文芸、ヒューマンドラマ、アクション、児童ファンタジー、偉人伝・・・。これからも彼自身がふわりふわりと浮遊しながら、予想もしない創造性の炸裂、そしてボーダーレスな映画作りを続けていってくれることだろう。そしてクリストファー・ノーラン、トム・フーパーら同世代の名匠らとも刺激し合いながら、英国映画の黄金期をさらに更新していってくれるはずだ。


参考:

http://deadline.com/2017/12/joe-wright-darkest-hour-interview-directing-career-dunkirk-behind-the-lens-video-1202218371/


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作品情報を見る


『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

3月30日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

公式サイト: www.churchill-movie.jp

(c) 2017 Focus Features LLC. All Rights Reserved.

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