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『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』ジョー・ライトが描いた二つの“ダンケルク”
2018.04.05
『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』あらすじ
「彼の決断が、歴史を変えた――。」1940年、第二次世界大戦初期。ナチス・ドイツの勢力が拡大し、フランスは陥落間近、イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。連合軍がダンケルクの海岸で窮地に追い込まれるなか、ヨーロッパの運命は、新たに就任したばかりの英国首相ウィンストン・チャーチルの手に委ねられた。嫌われ者の彼は政敵に追いつめられながら、究極の選択を迫られる。ヒトラーに屈するのか、あるいは闘うのか――。
Index
- 『ダンケルク』と同年に生まれた、表裏一体をなす歴史ドラマ
- 奇しくも『英国王のスピーチ』と前後編をなす内容に
- ジョー・ライトが『つぐない』で描いたもう一つの“ダンケルク”
- 歩きがもたらす意志とリズム、そして浮遊するカメラワーク
『ダンケルク』と同年に生まれた、表裏一体をなす歴史ドラマ
第90回アカデミー賞では、“ダンケルクの戦い”関連の作品が二つもノミネートされたことが多くの映画ファンを驚かせた。クリストファー・ノーラン監督作『 ダンケルク』とジョー・ライト監督作『ウィンストン・チャーチル』である。
同世代の二人の名匠たち(ノーランの方が2歳ほど年長)が、ほぼ同時期にダンケルクを扱った2作をそれぞれ発表したことは実に興味深い。とはいえ、その描き方は大きく異なる。一つは戦場で戦う兵士目線の迫真の映像で綴られ、もう一つは戦場から遠く離れたところで下される政治的決断の物語。いずれも歴史的事件の“表・裏”を、まるで意図的に棲み分けを行ったかのように描き上げた作品と言える。
『 ダンケルク』予告
それぞれの制作中にお互いの作品を意識することは少なからずあったかもしれない。だが、ジョー・ライトの言葉を借りるなら、両者が同時期に世に出たのは「偶然すぎるほどの偶然」だったようで、彼自身、自作が完成してからノーランの映画を鑑賞し、そのクオリティに度肝を抜かれたのだそうだ。