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ジョー・ライトが描いた二つの“ダンケルク”『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』

ジョー・ライトが描いた二つの“ダンケルク”『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』


奇しくも『英国王のスピーチ』と前後編をなす内容に



 だが、本作『チャーチル』と関連があるのは決して『ダンケルク』だけではない。もう一つ重要な接続作品として挙げておきたいのが、ほかならぬ『 英国王のスピーチ』だ。そしてこのトム・フーパー監督も’72年生まれでジョー・ライトと同じ歳である。


 アカデミー賞作品賞に輝いたこの映画は、兄が放棄した王位を自ら継承することとなった「スピーチの苦手な王様」の物語。そのクライマックスで彼は、ヨーロッパで猛威を振るい始めたナチス・ドイツに対して英国が宣戦布告(1939年9月3日)したのを受けて、運命のラジオ演説を通じて国民に心の底からの呼びかけることとなる。




 時系列的に見ると、それからおよそ半年後の1940年の5月9日、『チャーチル』の物語がスタートする。思い返せば『英国王のスピーチ』では、まるで後に巻き起こる史実への目配せのように、ジョージ6世とチャーチルがにわかに挨拶を交わす場面が印象深く描かれていたものだった。その点、『チャーチル』では二人がいかに互いを意識し、やがて信頼を寄せ合い、一つの決断に向けて共に立ち上がることを選択するかが描かれる。その時系列とストーリーラインからいって、『英国王のスピーチ』はある意味、『チャーチル』の前日譚とも言える位置にある。二作を連続してみれば、我々はまるで“前後編”のようにこの時代における独特の英国の空気を感じることができるだろう。


 また、『チャーチル』には『英国王のスピーチ』を意識したかのような描写が見て取れる。例えば、チャーチルが宮殿内でジョージ6世への謁見を行う折、長い長い廊下を直進していく場面。これは『英国王のスピーチ』の最後、ラジオ演説に向かう王が辿った廊下を彷彿とさせるものがあるし、またチャーチル自身がラジオ演説に臨む際に、あの『英国王』にも登場した赤い目玉のような「ON AIR」ランプが印象的に映し出されるのも、何らかの目配せのように思えてならない。




 『ウィンストン・チャーチル』はもちろん一作だけでも十分に堪能できる歴史ドラマではあるが、これら二作と併せて紐解くと歴史的出来事が多元的な立ち上がり方を見せるようになり、結果的に見る側の理解や興味関心も深まる。ぜひ本作の鑑賞と前後してこの激動の“うねり”に身を任せ、世界史の縦横のパズルを貴方なりに完成していってほしい。



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