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『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』"今観るべき映画"を可能とさせる早撮りスピルバーグの伝説

(c)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』"今観るべき映画"を可能とさせる早撮りスピルバーグの伝説

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ジャンルの異なる映画を同時に手がけるスピルバーグ



 もっとも、こうしたスピルバーグのアクロバティックな製作進行は、過去に何度か実践されている。特に知られているのは『 ジュラシック・パーク』(93)の6月11日の全米ロードショーから、わずか半年のインターバルを経て公開された『 シンドラーのリスト』(93)の例だろう。前者の撮影を終えたスピルバーグはそのままヨーロッパに渡って『シンドラー』の撮影に取り組み、夜は衛星回線を通じて『ジュラシック・パーク』の編集をおこなうという、信じがたい平行作業によって両作を成り立たせたのである。


 また『 プライベート・ライアン』(98)の撮影時には『 ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97)と『 アミスタッド』(97)の製作を同時に進行させ、『ロスト・ワールド』の4週間後に『アミスタッド』の撮影に入り、その6週間後に『プライベート・ライアン』の撮影に着手するといった、よりタイトを極めた進行を行なっている。



『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(c)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.


 こうした無茶な展開も、経年とともに収まったかと思いきや、2011年の『 戦火の馬』と『 タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』は全米でわずか一週間を隔てての公開という、同監督の異なる新作が同時に劇場で流れる奇異な様相を生み出している。そこにはアカデミー賞を筆頭とする賞レースへの参加など、興行的な目算がベースとしてあっただろう。しかし短いスパンでエンタテインメントを極めた娯楽作品と、世に一石を投じる社会派作品という、まったく方向性の異なる作品を同時に作り上げていく。その自在なスタイルはかくのごとく継承されてきたのだ。



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