(c)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』"今観るべき映画"を可能とさせる早撮りスピルバーグの伝説
2018.04.03
『ジョーズ』の反省と、先人への憧憬が生み出した早撮りへの対応
スピルバーグが早撮りを自発的におこなうようになった起因として、出世作である『 ジョーズ』(75)の反省が指摘されている。同作ではプロデューサーとの軋轢や、ロケ現場でアニマトロニクスによるサメの駆動がうまくいかなかったりと、そのために撮影が155日間という長期にわたってしまったのだ。以後、彼はこれを反面教師とし、自分に課した必須条件であるかのように早撮りを徹底させている。キャリアの早期から苦汁をなめたことが、現在のような取り組みを成立させているのだ。
またスピルバーグ自身がインタビューに応じたところでは、早撮りへの対応をこう回答している。「僕が年に2本も3本も作品を手がけるのは、ジョン・フォードやハワード・ホークスといった先人たちへの憧憬がある。彼らは40年代には何本も同時進行でプロジェクトを抱え、それを実現させてきた。映画監督であるからには、こういった取り組みを一度は見習いたかったんだ」
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(c)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』に息づいている、早撮りスピルバーグの伝統。その背景には、常人には真似のできない優れた才能と、実直なまでに映画に取り組んできた、彼の映画そのものを愛する姿勢が見え隠れするのである。
文献・資料
「 メイキング・オブ・インディ・ジョーンズ -全映画の知られざる舞台裏-」ジョナサン・W・リンズラー/ローレン・ボザロー著(小学館プロダクション/刊)
Warren Buckland“Directed by Steven Spielberg: Poetics of the Contemporary Hollywood Blockbuster”Continuum
Lester D. Friedman, Brent Notbohm“Steven Spielberg:Interviews”University Press of Mississippi
映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
3月30日(金)全国ロードショー
(c)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.
配給:東宝東和