韓国からハリウッドへ、撮影監督チョン・ジョンフンの仕事
『オールド・ボーイ』で撮影監督を務めたのは、パク・チャヌク作品に初参加となったチョン・ジョンフン。これを皮切りに、『親切なクムジャさん』(05)『サイボーグでも大丈夫』(06)『渇き』(09)『イノセント・ガーデン』(13)、そして『お嬢さん』(16)と10年以上にわたるタッグを組むことになった。
先に触れた望遠と広角の使い分けはジョンフンのアイデアだったようだが、チャヌクは撮影にあたり「カメラを常に回しておいてほしい。彩度は抑えて、画面に動きを」と要求。ジョンフンはこのオーダーに応えながら、1カットあたり10回以上の撮影を行い、計900カットを撮りきった。
本作を代表する名場面、数十人の悪漢を相手にオ・デスがたったひとりで戦う長回しのワンカット・アクションシーンはもちろん、デスが若いチンピラに金槌を振り上げる有名なショットもジョンフンの仕事。チャヌクは前者を「中世ルネサンス、あるいはディエゴ・ベラスケスの絵画のよう」と称え、後者に至っては「あまりにも映像がカッコよく決まりすぎていたので、点線を引いてジョークを加えた」とまで言っている。当時はまだキャリアの浅かったジョンフンだが、その才能をしっかりと感じられる画づくりだ。
『オールド・ボーイ 4K』© 2003 EGG FILMS Co., Ltd. all rights reserved.
2010年代中盤からジョンフンはハリウッドへ進出しており、エドガー・ライト監督『ラストナイト・イン・ソーホー』(21)や『アンチャーテッド』(22)のほか、『エジソンズ・ゲーム』(19)『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)などで撮影監督を担当。『スター・ウォーズ』のドラマシリーズ「オビ=ワン・ケノービ」(22)にも起用されるなど、すでにハリウッドになくてはならないフィルムメイカーとしての地位を築きつつある。
なお、チャヌクは『お嬢さん』以来となる新作映画『Decision to Leave(英題)』の公開を2022年に控えているが、この作品にジョンフンは参加しておらず、新たな撮影監督には『甘い人生』(05)『トガニ 幼き瞳の告発』(11)のキム・ジヨンが選ばれた。『スウィング・キッズ』(18)『白頭山大噴火』(19)などで撮影監督を、『Okja/オクジャ』(17)『パラサイト 半地下の家族』(19)ではカメラオペレーターを務めた人材であり、こちらのタッグにも期待が高まっている。