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サイモン&ガーファンクルの名曲から読み解く『さよなら、僕のマンハッタン』

サイモン&ガーファンクルの名曲から読み解く『さよなら、僕のマンハッタン』


歌詞を映画のストーリーに読み込むと見えてくるもの



 ここであえて歌詞の中身を本作のストーリーに重ね合せると、どんなビジョンが見えてくるのだろう。


 まず、単純に紐解くと、友達以上、恋人未満の関係の女性“ミミ”との関係性が重なる。彼女はニューヨークの大学に留まるか、それとも外国へと飛び立つかで思案中。そんな二人の関係性を歌詞に当てはめると、見送る側のニューヨークの少年=僕と、送られる側のミミという構図が鮮明に浮かび上がってくる。




 だが、ここでもう一つ別の見方もできることに我々は気づくだろう。というのも、カラム・ターナー演じる主人公の名は“トーマス・ウェブ”といい、歌詞の中で“僕”がエールを送る相手“トム”の名と奇妙なほど一致するからだ。


 つまり、もしも映画の作り手が意図的にこの二つの名前を重ね合わせたのであれば、主人公はエールを送る側ではなく、“送られる側の人間”となる。ニューヨークで若さを持て余し、自分の将来をどう切り開くべきか悩み続ける若者、トーマス・ウェブ。この歌詞は、モラトリアムな時期を過ごす彼に向けて「大丈夫、君ならきっとやれるさ」とエールを送る歌として解釈することも可能なのである。




 ではこの場合、エールを送る側とは一体誰なのか?という疑問が立ち上がるのだが、それは映画を最後まで見ると、物語の展開に合わせて、自ずと候補者が浮上してくるはず。その人物も一人ぼっちで寂しさを抱えながら生きてきたことが痛いほど分かってくる。近くて遠い存在に必死にエールを送りながら。サイモン&ガーファンクルの歌声を通じてその歌詞や想いに触れた時、映像でストーリーを追うのとはまた違った、別格の感動がこみ上げてくるのを誰もが禁じえないはずだ。


 本作はこの楽曲のことを詳しく知らなくても「悩めるニューヨークの少年の物語」として十分に楽しめる。だが、もし知っていると、解釈によって、主人公が“僕”になったり“トム”になったりと、人間関係を様々な角度で見つめることが可能となる。またこうやって自分の立つ位置を俯瞰できるようになる流れこそ、青年が大人への階段を着実に駆け上がっている証。こういった“気づき”の瞬間に寄り添うことができるのも本作のたまらない魅力なのである。


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