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『インサイダー』ジャーナリズムが後退する瞬間を捉えた骨太な社会派ドラマ

(c)Photofest / Getty Images

『インサイダー』ジャーナリズムが後退する瞬間を捉えた骨太な社会派ドラマ

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『インサイダー』あらすじ

CBSの人気ドキュメンタリー番組「60 Minutes」のプロデューサー、ローウェル・バーグマンのもとに匿名の書類が届けられる。それは、あるタバコメーカーの不正を告発する極秘ファイルだった。彼はその書類の意味を探るうち、ワイガンドという人物に行き当たる。真実を暴こうとするバーグマンだったが、やがてタバコ会社の圧力がテレビ局にも及ぶ…。


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マイケル・マンが描く男たちの壮絶な戦い



 東京の闇社会を探るアメリカの記者を描いたテレビ・シリーズ「TOKYO VICE」が話題を呼んでいるマイケル・マン監督。


 そんな彼の『ヒート』(95)と並ぶ90年代の代表作とも言えるのが『インサイダー』(99)である。実話を基にした作品で、タバコに含まれるニコチンの有害さをテレビの報道番組で暴露した元大手タバコ会社の副社長と番組のプロデューサーらの壮絶な戦いが描かれる。


 『ヒート』では派手なアクション場面を盛り込み、犯罪のプロフェッショナルと刑事との息を呑む戦いを描いたマンが、今度は体を張った戦いではなく、頭脳戦による男たちのドラマを映像化する。『ヒート』では犯人を執拗に追いつめる刑事を熱演したアル・パチーノが報道番組プロデューサーのローウェル・バーグマン役、ラッセル・クロウがタバコ業界の内部告発者のジェフリー・ワイガンドを演じる。『ヒート』では本来敵対関係にあった刑事と犯罪者との間に不思議な共感が生まれていくが、『インサイダー』でもTVプロデューサーと告発者は多くの葛藤を抱えつつも、気持ちを通わせる。パチーノは番組に出演した告発者に対して誠意を貫く人物を好演する。


『インサイダー』予告


 派手なアクションがないためか、アメリカでの興業は苦戦したようだが、その年のアカデミー賞では作品賞・監督賞・主演男優賞(ラッセル・クロウ)をはじめ、7部門で候補となっている。クロウはこの後に主演した『グラディエイター』(00)で2度目のアカデミー主演男優賞候補となり、見事に受賞。その後、『ビューティフル・マインド』(01)でも、同賞の候補となり、俳優として絶頂期を迎えることになる。受賞こそ逃したが、『インサイダー』でのクロウの演技は彼のキャリア中、最高の名演のひとつと考えられていて、2006年にアメリカの映画雑誌「プレミア」が選んだ<映画史100の名演>では23位に選ばれている。





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