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『妹の恋人』言葉の代わりに花束を、ジョニー・デップ初期の秀作

(c)Photofest / Getty Images

『妹の恋人』言葉の代わりに花束を、ジョニー・デップ初期の秀作

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『妹の恋人』あらすじ

ベニーには心の病を抱えている妹がいる。ある日、ベニー兄妹の前にサムという風変わりな青年が現れる。サムは読み書きはできないもののパントマイムを得意としており、固く閉ざしたジューンの心を開いていく。やがて2人は恋に落ちるが、妹離れできないベニーは2人が結ばれることに反対するのだった…。


Index


ジョニー・デップの形成期



 「ジョニー・デップには参ったね。次はこうくるか、それともこうくるか、と彼の演技はだれにも予測できなかった。でも映画を観たら、わかるんだ。そこに映っているのは、最高の演技をめざして没頭する役者の姿なんだよ」(エイダン・クイン)*1


 ハリウッド大作への安易な参加を避け、慎重に仕事を選んでいた初期のジョニー・デップにとって『妹の恋人』(93)は願ってもいない機会だった。元々チャップリンやバスター・キートンを偏愛していたデップと、本作の監督ジェレマイア・チェチックは企画の段階から意気投合。バスター・キートンを崇拝するサム役を演じるにあたり、デップは監督と共にロサンゼルスにある映画館を貸切った。ここで6週間にも渡りサイレント喜劇俳優の研究に打ち込んだという。


『妹の恋人』予告


 また、チャップリンについての著作を記しているパントマイム俳優ダン・カミンの協力を得て、デップは喜劇俳優の身振りの特訓に日々取り組んだという。カミンは、ロバート・ダウニー・Jr.が主演を務めるチャップリンの伝記映画『チャーリー』(92)にも協力した人物だ。当初『チャーリー』でチャップリン役をオファーされていたデップは「荷が重すぎる」という理由でオファーを断っている。


 『シザーハンズ』(90)のエドワード役で、言葉を介さない感情表現を既に体得していたデップにとって、『妹の恋人』はその延長上にある作品だった。そして本作で体得した喜劇俳優としての身振りは、『エド・ウッド』(94)や『デッドマン』(95)といった90年代の傑作モノクロ映画に応用されていく。本作と同年に発表された『アリゾナ・ドリーム』(93)で偉大な喜劇俳優ジェリー・ルイスと共演したことも、ジョニー・デップという稀代の俳優を形作った重要なトピックだろう。


 『妹の恋人』の舞台となったロケ地はワシントン州スポケーン。予定していた分の撮影が終わると、スタッフやキャストを交えて音楽を演奏したり食事をしたり、撮影はアットホームな雰囲気で進められたという。スポケーンの和やかな環境とデップのサイレントな演技が、本作の基調として大きく作用していく。


 「街そのものがストーリーだけでなく、ストーリーの語られ方、そこにいる私たちの感覚に影響を与えたのです。あの街で夜な夜な撮影をしていると、近所の人たちが椅子に座って見に来たり、食べ物を持って来てくれたりしました。とても温かく、素晴らしい環境で映画を作ることができました」(ジェレマイア・チェチック)*2





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