後のオスカー俳優とのみずみずしい共演
ブライアンと仲間たちは、なにぶん、まだ十代だ。信じたことに対して、わき目も振らず情熱を傾ける年齢。この学校を閉鎖するのは間違っている――そう信じたとき、彼らは学校で教わってきた秩序と統率、そして武力を持って、不条理な決断を下した大人たちに抵抗する。彼らの思想はタカ派といえばタカ派だが、一般的な若者たちと同様に仲間や家族を思いやる気持ちもある。さらに十代であってもブライアンのような最上級生には、それなりの責任感がある。一方で、十代らしく心が折れそうになることもある。そのような局面をリアルにとらえている点において、本作は優れた青春映画であると、筆者は考える。
校長に扮した『パットン大戦車軍団』(70)の名優ジョージ・C・スコットは別格として、キャストには未来のスターたちが顔をそろえていた。主人公ブライアンを演じたティモシー・ハットンは、前年にロバート・レッドフォード監督作『普通の人々』(80)で史上最年少(20歳)のアカデミー助演男優賞を受賞した旬の若手スターだ。一方、ブライアンの親友で、思慮深く、つねに的確の助言をあたえてくれるアレックス役には、後のオスカー俳優ショーン・ペン。本作は映画デビュー作となったが、映画監督を父に持つ彼はそれ以前からTVドラマや舞台でキャリアを積んでおり、繊細なアレックス役には申し分のない若手俳優だった。
『タップス』(c)Photofest / Getty Images
そして、ブライアンのもうひとりの親友で、アレックスとは対照的に血の気の多い好戦派の生徒デイビッドにふんしたのがトム・クルーズ。撮影の時点ですでに二十歳になっていたハットンやペンに比べると、当時19歳だったクルーズは演技の経験は少なく、この時点では映画『エンドレス・ラブ』(81)の、ごく小さな役でデビューしたばかりの新人に過ぎなかった。