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『タップス』10代で無名のトム・クルーズが光った青春映画

(c)Photofest / Getty Images

『タップス』10代で無名のトム・クルーズが光った青春映画

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誰よりも暴走してしまう少年、その熱情と切なさ



 話を巻き戻そう。『タップス』に最初にキャスティングされた際、クルーズに当てられた役は血気盛んなデイビッドではなく、その友人という、ごく小さな役だった。ところが、デイビッド役の俳優は狂気的な行動に走るキャラクターを理解できず、軍事訓練キャンプが終わった後に役を降りてしまう。そこでデイビッド役のお鉢がクルーズに回ってきた。が、ともに訓練キャンプを過ごしてきた“戦友”に申し訳ないという気持ちが先立ち、クルーズはこのオファーを固辞していた。


 製作陣に説得され、デイビッドを演じることになったクルーズは、この役の難しさを熟知していた。友情に厚く仲間思いだが、激しやすくて好戦的。追いつめられたあげく、クライマックスでは狂ったように、しかも嬉々として銃を乱射する。この狂気に説得力を宿らせるという重責を担ったクルーズは、デイビッド役にのめりこむあまり、プライベートでの性格も変わってしまい、当時付き合っていた恋人と別れるハメになったという。


 『トップガン』でスーパースターとなって以来、クルーズにはミスター・ハリウッド的なイメージが付き、未熟ではあるが一生懸命だったり、ヒロイックだったりと、好感の抱けるキャラクターを多く演じるようになる。ヴィラン的なポジションを務めたのは、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(94)と『コラテラル』(04)くらい。いずれも狂気とカリスマ性を宿らせた役ではあったが、その原点には『タップス』でのタカ派兵士があったと、見ることもできるだろう。


 しかし、繰り返しになるが、本作でクルーズが演じたキャラクターは、まだ10代である。その結末には青春映画らしい、切なさが宿っているのだ。



参考:「トム・クルーズ非公認伝記」(青志社刊)



文:相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。



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