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『ナイトメア・アリー』ギレルモ・デル・トロが若い頃から撮りたかったノワールとしての到達点

© 2022 20th Century Studios.

『ナイトメア・アリー』ギレルモ・デル・トロが若い頃から撮りたかったノワールとしての到達点

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光と影で陶酔を与えるほどの映像美



 そして2年後が描かれる映画の後半は、ムードも一転する。このスタイルもギレルモ映画では、ちょっと異例だ。読心術の裏テクニックを身につけたスタンは、“電気人間”として活躍していたモリーとともにカーニバルに別れを告げていた。高級ホテルで上流階級の客を相手に読心術のショーで儲ける2人だが、そのトリックを見破った謎めいた美女と、ある取引を交わすのだった……。この後半のドラマは、もちろんスリリングな空気で観る者を集中させるのだが、何よりギレルモの映画愛と知識が詰め込まれ、極上の“映画的世界”を届けてくれる。


 ギレルモが若い頃から撮りたかったというジャンルが、ホラーとノワール。ホラーはすでに手がけたので、今回はもうひとつのノワールに満を持して挑んだ。フィルム・ノワールといえば、1940〜50年代のハリウッドで量産された犯罪映画。ダークな世界観、ファム・ファタール(謎めいた美女)、スタイリッシュな映像といったノワールの特徴を、今回、ギレルモは最新のテクニックとともに再生させた。



『ナイトメア・アリー』© 2022 20th Century Studios.


 一見、クラシックの世界のような『ナイトメア・アリー』が、大胆かつ新鮮な作品に見えるのは、ギレルモのジャンルへのリスペクトと、細部まで計算しつくした演出術が合体したから。とにかく映像の美しさには息をのむばかり! たとえば、スタンと、彼からとある取引を持ちかけられた心理学博士リリスが対話するシーン。暗い室内と窓の外の雪のコントラストは、他のどんな映画でも味わったことのない陶酔感がもたらされるはず。




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