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『ナイトメア・アリー』ギレルモ・デル・トロが若い頃から撮りたかったノワールとしての到達点

© 2022 20th Century Studios.

『ナイトメア・アリー』ギレルモ・デル・トロが若い頃から撮りたかったノワールとしての到達点

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『ナイトメア・アリー』あらすじ

大恐慌時代のアメリカ、ショービジネスでの成功を夢見る、野心溢れる青年スタンがたどり着いたのは、人間か獣か正体不明な生き物を出し物にする怪しげなカーニバルの一座だった。そこで読心術の技を身につけたスタンは、人を惹きつける才能と天性のカリスマ性を武器にトップの興行師となるが、その先には想像もつかない闇が待ち受けていた…。


Index


奇怪な世界へと導かれる快感



 ギレルモ・デル・トロ。その名前を耳に、あるいは目にしたとき、映画のファンの多くは心がときめくことだろう。これまでのキャリアで、いわゆるオタク的なアプローチを全開に数々の怪作・傑作を放ち続けながらも、2017年の『シェイプ・オブ・ウォーター』では、アカデミー賞で作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞の4冠に輝いた。つまりオタクにして、巨匠。偏愛するマニアックなネタをたっぷり注入しつつ、豊富な知識によって映画として重厚な味わいを達成させる。そんなギレルモの持ち味が、究極レベルで達成されたのが『ナイトメア・アリー』ではないか。


 ギレルモ・デル・トロ映画の最大の魅力といえば、何か得体の知れない、奇怪な世界へ誘い込まれる喜びと恍惚感。例えるなら、子供時代に怖い絵本や童話に夢中になってしまう、あの感覚。言葉にできないゾワゾワ感を、大人になってから再び呼び起こしてくれるのが、ギレルモの映画だ。『ナイトメア・アリー』では、大きく分けて前半のパートが、怖い絵本の世界を満喫させてくれる。



『ナイトメア・アリー』© 2022 20th Century Studios.


 そこは、1930年代、カーニバルの世界。死んだ者が見えるという霊媒師や、全身に電気を流す女性など、奇妙で怪しい見世物の数々……。そこに潜り込んだ流れ者の主人公、スタンとともに、映画を観るわれわれは不思議な世界に魅せられていく。当時を再現したノスタルジックな美術も雰囲気満点だ。中でも衝撃的なのは“獣人(ギーク)”のショーで、生きたままニワトリを貪り食おうとする姿が、本能レベルで刺激してくる。


 ただ、これまでのギレルモ映画を象徴してきた、幽霊やロボット、半魚人、モンスターという非現実の要素は薄く、あくまでも現実の人間が“怖い童話”へと導く役割を果たす。静かに、そしてじんわりと妖しい世界に浸ってしまうのだ。




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