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『ブラディ・サンデー』観る者すべてを圧倒する生々しい臨場感はいかにして描かれたのか?

(c)Photofest / Getty Images

『ブラディ・サンデー』観る者すべてを圧倒する生々しい臨場感はいかにして描かれたのか?

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『ブラディ・サンデー』あらすじ

1972年1月30日、イギリス統治下の北アイルランド、ロンドンデリーで起こった「血の日曜日事件」。事件当日、現地では公民権をめぐるイギリス政府の政策に抗議するデモ行進が呼びかけられていた。平和的に遂行されるはずだった行動は、彼らの動きを警戒するイギリス軍との対峙で一触即発となり、やがて鳴り響き始めた銃声をきっかけに、非武装の市民側に多くの負傷者と14人の死者を出す惨事へと変わる。


Index


名匠グリーングラスの名を知らしめた名作



 2002年に始まった「ジェイソン・ボーン」シリーズは、ハリウッド映画に変革をもたらしたとよく言われる。中でも2作目『ボーン・スプレマシー』(04)のカメラワークがもたらした衝撃は凄まじいものだった。このアクションとサスペンスとドキュメンタリーが融合したかのような破格の臨場感において、我々は傍観者の立場から事件の渦中へと引き摺り出され、もはや一部始終の”目撃者”になったと言っても過言ではない。


 手掛けたのは英国出身のフィルムメーカーであり、ジャーナリストとしての経歴も持つポール・グリーングラス監督。そんな彼の名をいちばん最初に印象付けることになった作品こそ、TV映画として製作されながら、サンダンス映画祭やベルリン映画祭で高い評価を獲得した『ブラディ・サンデー』(02)だ。


『ブラディ・サンデー』予告


 今年で製作20周年を迎える本作を紐解くと、その後、グリーングラスの持ち味になっていく”むせ返るような空気”が、既にこの時点で確立されていたことに改めて気づかされる。


その日に何が起こったのかを検証する



 本作は、1972年1月30日、イギリス統治下の北アイルランド、ロンドンデリーで起こった「血の日曜日事件」を描いた物語だ。


 事件当日、現地では公民権をめぐるイギリス政府の政策に抗議するデモ行進が呼びかけられていた。平和的に遂行されるはずだった行動は、彼らの動きを警戒するイギリス軍との対峙で一触即発となり、やがて鳴り響き始めた銃声をきっかけに、非武装の市民側に多くの負傷者と14人の死者を出す惨事へと変わる。事件直後に行われた調査でも、中立性や正当性を全く欠く一方的な結果が言い渡された。こういった対応がアイルランド中の激しい怒りを招き、北アイルランド問題のさらなる深刻化を引き起こしたと言われる。


 そもそも、ポール・グリーングラスがこの事件の映画化を決めたのは、一冊の本との出会いがきっかけだった。ドン・マランという作家が一連の事件について記した書籍「Eyewitness Bloody Sunday」(97)を読み進めるうち、グリーングラスは自分がその現場で、死に物狂いで銃弾を避けながら逃げ惑っているかのような心境に包まれたという。「この題材を映画化したい!」という衝動に駆られた彼は、すぐさま著者マランと会って、協力を要請。72年当時の様子を知る人たちや犠牲者の家族などと引き合わせてもらいながら、映画化の方向性を共に探っていくことになる。



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