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奇才ギリアムのソロ監督デビュー作『ジャバーウォッキー』が4K版で再降臨。尽きることのないイマジネーションの原点がここに
ギリアムらしく苦難や難関にぶち当たることも
このように『ジャバーウォッキー』は格別のバイタリティと遊び心に満ちた快作に仕上がったものの、これを観た当時の観客たちはやはりどうしても「モンティ・パイソン」作品と比較してしまったようだ。その上で、メンバーの三人しか関わっていない点、パイソンズ的な”笑い”が満載というわけではない点にいささか戸惑う向きもあったとか。みんなギリアムのソロ監督作をどう見ればいいのかわからなかったのかもしれない。
しかし、今の私たちには十分わかる。当時の観客とは違い、ギリアムの文脈でじっくりと相見えることが可能だ。
そうした中で改めて気づくのは、本作にはどこか『ホーリー・グレイル』の余波を引きずった味わいがありつつ、かと思えば、ギリアム流のシニカルな笑いやグロテスクさ、それから大画面で味わうべき映像美や特殊造形、大胆なカメラワークが垣間見られたりと、当時の彼のこだわり、苦悩、奮闘ぶりが包みかさず、そのまま大っぴらに現れているということ。
『ジャバーウォッキー 4Kレストア版』© 1977 National Film Trustee Company Limited. All Rights Reserved.
全部ひっくるめてギリアムのファンにとって(いやファンでなくとも)大いに楽しめるし、存分に愛情を注ぐにふさわしい作品であること請け合いである。
ちなみに、この映画がシェパートン・スタジオで撮影されたのは1976年で、当時は同じイギリスのエルストリー・スタジオであの『スター・ウォーズ』が撮影されていた。書籍「Gilliam on Gilliam」のギリアム発言によると、両作を掛け持ちする現場スタッフも多かったようで、彼らは『スター・ウォーズ』が公開されると途端に「ルーカスはすごい!」と大絶賛し出したのだとか。
ただ、つくづく運命ってものはどう転ぶのか本当によくわからないもので、今回の4K修復版が、ジョージ・ルーカスの出資もあって完成したというのは興味深い点だ。こういった顛末にも、どこかギリアム作品を観ているかの様な余韻を感じるのは私だけだろうか。
参考文献:
「テリー・ギリアム映像大全」ボブ・マッケイブ著、川口敦子訳(1999年/河出書房新社)
「テリー・ギリアム Gilliam on Gilliam」イアン・クリスティ編、廣木明子訳(1999年/フィルムアート社)
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
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『ジャバーウォッキー 4Kレストア版』
7月1日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
配給:アンプラグド 提供:是空
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