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『バンデットQ』トラブルを伝説に変えてしまう、テリー・ギリアムの創造性とは

(c)Handmade Film Partnership 1981

『バンデットQ』トラブルを伝説に変えてしまう、テリー・ギリアムの創造性とは

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『バンデットQ』あらすじ

11歳の少年ケヴィンの子供部屋である晩、唐突に一人の騎士が壁を抜けて現れ、また壁を抜けて姿を消すというとんでもない怪現象が発生した。ケヴィンはそのことを親に伝えるが、全く信じてもらえない。怖いながらも証拠写真を撮ってやろうとインスタントカメラと懐中電灯を持って夜更けに待ち構えていると、今度は6人の薄汚く厚かましい小人(こびと)たちが現れる。 


小人たちが言うには、彼らは万物の創造主に仕えているが、ある日とうとう仕事に嫌気が差して、時空間を好き勝手に移動できるタイムホールが記された地図を創造主から奪って、様々な世界で略奪の日々を送ろうとしていたのだという。そのとき、地図を盗まれたことに怒り狂った創造主が巨大な顔として追いかけて来て、ケヴィンは訳もわからず小人たちと逃げ出す羽目に。


1796年のイタリアに瞬間移動した一行は、たまたま街を占領していたナポレオン・ボナパルトに出くわした。背の小さいことで劣等感を抱いていたナポレオンは、ケヴィンや小人たちが自分よりチビ助なのに大いに気を良くして晩餐に招く。晩餐会に招かれた小人たちはナポレオンが良い気分で酔いつぶれると、そこら中から金目のものをかっぱらう。  次に一行はシャーウッドの森に姿を現し、貴族が盗賊に襲われているのを見物する。しかしその様子を、虎視眈々と狙う者がいた。魔王が、このタイムホールを利用することで、世界を支配しようと企てていたのだ。そして魔王は一行から地図を奪おうと画策する。 


一方、ケヴィンは小人たちとはぐれ、ギリシャの砂漠に一人放り出され、野獣の仮面をかぶった男と格闘していたアガメムノン王を手助けする。功績を称えられ彼の養子にされかけたケヴィンだったが、そこへ小人がやってきて彼ごと姿をくらます。その後も沈没直前のタイタニック号に姿を現したり、帆船に拾われてみれば、それは巨人の帽子だったりと無茶苦茶な冒険の果てに、魔王の居城にたどり着く。 


罠に掛けられ地図を奪われた一行は様々な世界から射手やら騎士やらガンマンと言った助っ人を呼び込むが、強力な力を持つ魔王にはやられっぱなし。あわや絶体絶命と言う所で創造主が現れ…。ケヴィン、そして小人たちの運命はいかに…!?


Index


ブレない、妥協しない、童心を忘れない。映画界の至宝、テリー・ギリアム



 テリー・ギリアムの映画はいつも僕らをドキドキさせてくれる。それは何も映画のクオリティがどうだとか、批評的に見て優れているとかいうレベルの話ではない。そういう物差しでは計れないほど、彼はこの数十年にわたって一貫して唯一無二であり続け、この商業主義の時代において安易な妥協を許さず、自分自身が「面白い!」と感じるものだけをひたすら追い求めてきた。


 彼は自らの映画作りについてこう述べている。


 「映画を撮る時はいつも童心に返っている。ハラハラドキドキしっぱなしで、一体どこへ進んでいくのかわからない。僕の映画は全部そうだ。ある地点をひたすら目指しながらも、途中で思いがけない迷走が始まる。最終的に目的地には着くんだけれど、そこまでの過程はまさにごちゃごちゃ、波乱万丈。おそらく、自分や観客の予想を大きく超えたいという気持ちが人一倍強いんだろうね」(『バンデットQ』DVD収録インタビューより)



『バンデットQ』(c)Handmade Film Partnership 1981


 もっと柔軟に、妥協を重ね、臨機応変にやれる手はあるのかもしれない。が、そうなればギリアムはギリアムではなくなる。柔軟性や臨機応変とは全く真逆のところに彼はいて、面白いものを作るため、自分の心を決して偽ることなく常に戦い続けている。その意味において、これほど期待を裏切らない映画監督は他にいないだろう。



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