兜を脱いだその顔は、ショーン・コネリー
本作はギリアム特有のビジュアルや世界観もさることながら、マイケル・ペイリンとジョン・クリースというモンティ・パイソンのメンバーが顔を出しているのもファンにはたまらない魅力となった。
それだけではない。この映画を他とは決定的に違う特別な一作へと押し上げたのは、他でもない大俳優ショーン・コネリーの存在だろう。実はギリアム、本作の初稿のト書きにこう記していた。
「ここで戦闘を終えたアガメムノンが兜を脱ぎ、初めて観客に顔を見せる。それはショーン・コネリーか、あるいはそれに匹敵するレベルの、ただしギャラのもっと安い俳優だった」
『バンデットQ』(c)Handmade Film Partnership 1981
もちろん現実を直視すれば、必死でかき集めた微々たる制作費から見えてもコネリーの獲得など夢のまた夢。コネリーの名前を使ったのは単なるキャスティング上の参考としてであって、それが実現する可能性について真剣に考えたこともなかった。
だが、世界は意外と狭いものだし、奇跡は忘れた頃に突然起こるもの。蓋を開けてみると、本作のプロデューサーがコネリーとゴルフ仲間で、さらにコネリーはモンティ・パイソンの大ファンであることが発覚する。そこを糸口に話はとんとん拍子で進んでいき、いざ会ってみるとギリアムとも意気投合。「だったら、喜んで出演してあげるよ」ということになったそうだ。
コネリーが出演するというだけで周囲の目はガラリと変わる。おそらく本作のステイタスも1ランクか2ランクくらい上がり、資金集めの面でも大きな効果があったはずだ。それだけではない。これまでに幾多の修羅場をくぐり抜けてきたコネリーは、監督としてまだ経験の乏しいギリアムに的確なアドバイスを与え、彼が自信喪失しそうになると力強く励ましもした。
挙げ句の果てには、追加撮影のためスタジオ脇の駐車場でほんのワンシーンだけ演技することも承諾した。コネリーの存在は本作の誕生に欠かせないものとなっていったのである。