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『なまいきシャルロット』“あこがれ”を身に纏う、永遠のシャルロット

© TF1 FILMS PRODUCTION – MONTHYON FILMS – FRANCE 2 CINEMA

『なまいきシャルロット』“あこがれ”を身に纏う、永遠のシャルロット

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行かないで、シャルロット!



 シャルロット・ゲンズブールとの『なまいきシャルロット』と『小さな泥棒』、そしてロマーヌ・ボーランジェとの『伴奏者』(92)には、クロード・ミレールの「少女三部作」のような趣きがある。トリュフォーの遺稿を引き継いだ『小さな泥棒』は、『大人は判ってくれない』(59)の脚本から省かれた万引き少女ジャニーヌの物語だ。思春期に移行したシャルロットによるロードムービーといえる。そしてオペラ歌手とコンサートツアーに出る『伴奏者』は、『なまいきシャルロット』のあり得たかもしれない続編のような趣き。内気なヒロインによる自己肯定感の低さや、不意に牙を剝く反抗心、恋愛に至らない出会いを繰り返していく様には、『なまいきシャルロット』の少女の面影が強く滲んでいる。


『なまいきシャルロット』予告


 『なまいきシャルロット』では旋盤工の青年との恋愛未満のエピソードが挿まれるが、「あこがれ」の世界に生きているシャルロットにとって、恋愛は興味の対象とはいえない。シャルロットはクララに近づく手段として青年と出会い、年齢を偽り、恋愛ごっこをする。青年が本当の恋愛を迫ろうとすると、シャルロットは途端に拒絶反応を起こす。シャルロットにとって大事なのは、クララの華々しい世界に付き添うこと、そして青年の前で大人のふりをすることなのだ。シャルロットが二階の窓から顔を出し、家の前に来た青年と会話をするシーンは豊かさに溢れている。「ロミオとジュリエット」的な古典的位置関係における二人の会話。年齢を偽って大人の女性のふりをするシャルロットの、少しだけ髪をかき上げる不慣れな仕草。その不器用さが美しい。幼い頃に母親を亡くしたシャルロットには、模範となる大人の女性がいなかったのだ。


 クララの演奏会用の赤いドレスを着るシャルロットのシーンは、残酷なまでに美しい。クララの奏でる美しいピアノの旋律を、離れたバルコニーから聴くシャルロット。シャルロットにとってクララはどこまでも手の届かないところにいる。クララの豪邸でシャルロットは別の世界を知ると共に、痛ましいほどの遠さを知る。本作においてドレスはもう一度登場する。家政婦のレオニーは、かつて少女時代に着ていたドレスをシャルロットにプレゼントする。レオニーのドレスを着たシャルロットは、レオニー、ルルを連れ、三人でクララの演奏会へ向かう。



『なまいきシャルロット』© TF1 FILMS PRODUCTION – MONTHYON FILMS – FRANCE 2 CINEMA


 『なまいきシャルロット』において少女がドレスを着るという行為は、過ぎ去っていく「あこがれ」を身に纏うということだ。コンサート会場の外で絶叫する小さな親友ルル。シャルロットがクララのことを好きなように、ルルもまたシャルロットに憧れにも似た好意を持っている。ルルはシャルロットがつけている「ブルームーン」という香水の香りが大好きだ。ルルはいまのままのシャルロットに憧れている。「行かないで、シャルロット!」というルルの切実な叫びは、過ぎ去ろうとしている「あこがれ」に対して、私たち自身の叫びと共鳴を起こす。そのままでいい。行かないで、シャルロット。永遠のシャルロット。


*1 「Serrer sa chance: Entretiens avec Claire Vassé」(クロード・ミレール、クロード・ヴァッセ)



文:宮代大嗣(maplecat-eve)

映画批評。「レオス・カラックス 映画を彷徨うひと」、ユリイカ「ウェス・アンダーソン特集」、リアルサウンド、装苑、otocoto、松本俊夫特集パンフレット等に論評を寄稿。



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作品情報を見る



『なまいきシャルロット』

「生誕80年周年記念 クロード・ミレール映画祭」

全国順次公開中

主催・配給:ノーム

© TF1 FILMS PRODUCTION – MONTHYON FILMS – FRANCE 2 CINEMA

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