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『なまいきシャルロット』“あこがれ”を身に纏う、永遠のシャルロット

© TF1 FILMS PRODUCTION – MONTHYON FILMS – FRANCE 2 CINEMA

『なまいきシャルロット』“あこがれ”を身に纏う、永遠のシャルロット

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『なまいきシャルロット』あらすじ

夏のパリ。バカンスに沸く人々とは対照的に、13歳のシャルロットはなんとなく憂鬱だった。その理由は自分でもわからず、無骨で頑固な父や口の悪い兄、母代わりのメイドに、ついあたってしまう。そんなある日、シャルロットが教室へ行こうとすると、美しいピアノのメロディが聞こえてくる。音楽室を覗き込むと、同い年の少女クララの姿があった。天才的なピアノの才能を持ったクララに、シャルロットは憧れとも嫉妬ともつかない感情を抱き、心がかき乱されていく…。


Index


眩しすぎた13歳の夏



 「シャルロットを見たとき、それは一目瞭然でした。私は急いでジェーン・バーキンの家に行き、シャルロットに会わせてくれるように頼みました」(クロード・ミレール)*1


 眩しすぎる13歳の夏。地元の学校のプールの授業。飛び込み台の梯子を恐る恐る登っていくシャルロット(シャルロット・ゲンズブール)。プールを見下ろす視点ショット。飛び込み台から見たプールの水面は無情なまでに夏の光を反射させていて、シャルロットにとってその光は眩しすぎた。恐怖のあまり、なかなか飛び込めないシャルロットに向けて、同級生の男子たちが意地悪な言葉を投げる。


 恐怖と屈辱。クロード・ミレールによる『なまいきシャルロット』(85)の少女像を形作るコアのようなものが、このファーストシーンに凝縮されている。プールに飛び込む際、膝に軽傷を負ったシャルロットは、更衣室で孤独にしゃがみこむ。不意を突くように登場する裸の女性教諭。大人の女性の身体とシャルロットのまだ発育過程の身体が、このシーンでは明確なコントラストとして提示されている。



『なまいきシャルロット』© TF1 FILMS PRODUCTION – MONTHYON FILMS – FRANCE 2 CINEMA


 『なまいきシャルロット』のシャルロットは、少女であって少女ではない。男性作家の描くロリータ幻想からも遠いところにいる。少年のような少女。あるいはそのどちらでもないアンドロジナス性を纏っている。本作の撮影があと一年でも遅れていたら、この作品の意義は大きく変わってしまうだろう。三年後に撮られた『小さな泥棒』(88)でのシャルロット・ゲンズブールは、思春期の少女の身体つきへと移行している。


 カトリーヌ・ドヌーヴ演じる母親に口答えするボーイッシュな娘を演じた『残火』(84)。この作品を見たクロード・ミレールの妻アニー・ミレールは、早急にシャルロット・ゲンズブールに会うことを夫に勧めたという。カーソン・マッカラーズの小説「結婚式のメンバー」に影響を受けた、『なまいきシャルロット』の脚本はほぼ出来上がっていた。ジェーン・バーキンと本読みをするシャルロット・ゲンズブール。無口だった彼女の答えは「パパとママがOKなら...」。*1





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